ドライヤーの音が聞こえる。

洗面所で姉ちゃんがいつものように何かをわめいていた。

俺はちゃぶ台の前で朝ご飯を食べながら、テレビを見ている。

「じゃ、行ってきます」

バタバタと廊下を走る足音が聞こえて、姉は出勤していった。

親父が顔をのぞかせる。

「重人はまだコンビニの仕事は始まらないのか?」

「お父さん、昨日もそれ聞いてたじゃないの。お店の改修工事が終わらないと無理だって」

「あぁ、そうか」

「早く行かないと、遅刻するわよ」

父と姉は出て行った。

先に食事を終えた母と二人、ちゃぶ台の前でテレビを見ている。

TTRSこと東京都庁ロボット新宿は、その起動を停止した。

起立誘導板の上で寝転がったままの操縦席から、俺たちは自力で外に出る。

「おい、お前!」

竹内は外に出るなり、俺の胸ぐらをつかんだ。

「なぜすぐに停止ボタンを押さなかった!」

「押しただろ、押したから止まったんだ」

「嘘つけ!」

細い目が、強く見開かれている。

「……そのまま起動させてやろうかと、一瞬でも迷ったことはないと、断言できるか?」

「離せ」

 振り払おうとしたその手を、竹内はたたき落とす。