竹内の目が俺の目をじっと見つめる。

そのまま腰からワイヤーを取り出すと、自分のフックにつないだ。

「この端はお前が持て」

受け取ったそれを、俺は同じように腰につなぐ。

「目標はすぐ下だ」

吹き抜けとなっている床の縁に手をかけ、竹内はぶら下がった。

「距離はない。十分飛び移れる」

両手の指先だけが見えていたのが、ふっと視界から消えた。

伸びてゆくワイヤーが勢いよく震える。

「来い」

促されて、階下に下りた。

人一人がかろうじて通れる位の隙間に、体を滑り込ませる。

「これが操縦室か」

むき出しのロボット本体に、作業着が引っかかる。

合体の際に他のパーツと接合されるのか、操縦室入り口と思われる背面は、壁にほぼぴったりと横付けされていた。

「本来ならここから入るんだ。メンテや操縦訓練のため、出入りは頻繁にあったはずだ」

竹内は壁にマーキングとしての発信器を取り付ける。

「一旦外に出よう。これを元に探しだせば、外からの進入路が分かるはずだ」

壁から抜け出すと、最初に竹内がノートPCを広げていた部屋に戻った。

電波の情報から位置を特定する。

本棚の裏の隠し部屋からさらに奥、何もない白い一枚板の向こうから、その信号は発せられていた。

「この壁の向こうに、なんの仕掛けがあるっていうんだ。特殊センサー? バイオメトリクス?」