「内部構造と設計図の違いは調べたんだろう? それで何が分かった?」

竹内は無言で歩いていた。

が、ぼそりと口を開く。

「遮蔽板が使われていて、調べられない。四角いブラックボックスがあるだけだ」

何もない廊下の壁が開いた。

侵入した小部屋の壁を指す。

「このあたりが設計上そうなってるけど、実際のところは分からない」

「配線を切ればいいじゃないか。工事のせいにして、後で直せばいい」

ドリルで壊した壁の隙間に入る。

室温は一気に上がり、暗闇に視界は奪われる。

竹内はヘッドライトをつけた。

「見えるか? このスパゲッティコード」

合体のための各パーツを通す通路に、滝のようにおびただしい数のコードが流れていた。

それが階層を貫き、はるか上空から足元にまで及んでいる。

「これを切って責任を取らされるのは、俺たちじゃない。あのおじさんたちだ。無関係の一般市民に罪をかぶせるのか? やれるもんならやってみろよ」

カビ臭い湿った風が吹き上げた。

ここを移動して合体するのか。

「設計図があてにならないのなら、実際に行ってみるしかないじゃないか」

「は?」

「操縦プログラムのセキュリティを未だ突破出来ないのは、それが独立しているからだよ。どこともつながっていない。解除するパスワードもない。もしくは未設定」

竹内は俺を振り返った。

腕の時計を見る。

時刻は12時になろうとしていた。

「行こう。この通路をたどっていけば、足元にはすぐ目的の物があるはずだ」