「なんだ新入り、こんなところで何やってんだ」

「あ、いや。保全課の人にちょっと頼まれまして」

親方らしき男は、俺を見上げた。

「あんた、技士さんの会社のもんか?」

「えぇ、そうです」

「あの兄ちゃん、あんたの上司か? さっきから探してるのに、姿が見えねぇんだ。知らねぇか?」

竹内と目を合わせる。

「上司って、四角い顔で背がこれくらいの、髪がさらさらした感じの人ですか?」

竹内は俺の背に隠れ、端末で飯塚さんの顔写真を探している。

「髪がどうのこうのって言われても、分かんねぇけどよ」

「え、なんか眉毛がこう、斜めに、こうっていうか……」

適当なことを言って時間を稼ぐ。

竹内の端末が俺の手に渡った。

「あ、こんな感じの」

それを操作するフリをしてから、親方に見せる。

「あぁ? あー。そうだな、うん。コイツだ」

「僕も探してるんですよ。見かけたら教えてください」

「おう。おい、お前。保全課の頼まれごとが済んだら、お前も仕事に戻れよ」

親方の姿は、廊下の角に消えた。

「すぐに俺たちも探しに行こう」

「隊長への報告はしておいた」

竹内は端末をポケットにしまった。

「いい加減にしろ。命令を忘れたのか。いや、俺に出されてるのとは違うのか?」

黒縁眼鏡のブリッジをクッと持ち上げる。

「頼りにならない相棒なら、いらない。俺への指示は、操縦室への『侵入と阻止』だ。『捜索と確保』じゃない」

竹内の視線は、何かをスキャンするように俺の全身を上下した。

「じゃあな。お前にとっての正解を、勝手に貫け」

考えろ。

作戦の一部としての自分と、何が正解かを求めている自分とを。

竹内の機嫌が悪いのは、俺がずっとそれを混同しているからだ。

後を追う。