都庁前広場についた頃には、11時を過ぎていた。

まぶしいほど輝くこの白い巨体は、数時間後に秘密裏に内蔵する巨大ロボを出現させようとしている。

「あれ、重人? こんなところで何してんの?」

「姉ちゃん!」

「珍しいわね、何の用よ」

「な……、えっと、ハローワークに……」

「都庁にハロワなんてないわよ。何しに来たの」

「と、都民の声総合窓口!」

「いいからちょっとこっち来なさい」

強引に袖を引かれ、連れて行かれる。

姉貴になんか、かまってる場合じゃないのに!

「ちょ、ゴメンだけど俺さ……」

本庁舎に向けて、カメラを構える男性二人組がいた。

「都庁で何か、撮影でもしてんの?」

「あぁ。なんかね、ネットで今日の2時に都庁がロボ化するって噂が流れてるみたいなのよ。漫画やアニメじゃしょっちゅう爆破されたり占拠されたりしてるけど、さすがにロボ化ってのはね」

呆れたように笑う姉の横顔に、焦りがつのる。

これも飯塚さんの「見えない仲間」の力か。

「俺、もう行かないと」

「どこに」

返事の出来ない俺に、姉はため息をついた。

「分かったわよ。ランチちょっといいとこおごってあげるから、久しぶりに話そ。あんたと喧嘩ばっかりしたいワケじゃないんだからさ、私だって」

「喧嘩って、なに?」

「……。ニートだって、いつも怒ってること」

「違う!」

くそっ。

こういうとき、いつもどうやって切り抜けてきたっけ。