どこにでもある昼下がりの公園で、俺はベンチに腰かけたままイライラと待っていた。

完璧にけだるい午後3時。

約束の時間を2時間も過ぎている。

都会の谷間に埋もれる普通の小さな三角公園で、暇を持てあましたサラリーマンはベンチに寝そべり、人を恐れたこともない鳩は退屈そうに俺を見上げる。

「くそっ」

ガツンと地面を蹴飛ばした。

理学部数学科大学院博士課程を修了してからはや2年、俺はあらゆる試練に耐え、今こうしてここに座っているのだ。

そう簡単にあきらめるわけにはいかない。

巻き上げられた小石に驚いた鳩たちは、飛び上がって俺との距離を取り直す。

そんなことをしたって、どうせまた近寄ってきて、俺をバカにするんだ。

ここでなにやってんだ、役立たずめ。

餌をくれないんなら、どっか行けよ。

そんなことを、もう何度もくり返していた。

「なんだ兄ちゃん、暇してんのか」

俺の座るベンチの横に、一人の小汚いおっさんが腰掛けた。

手には使い回したような小さな紙バッグを持っている。

季節外れの分厚いコートの前を広げ、股を開き仰々しくもふてぶてしいその態度は、ますます俺をイラつかせた。

「ニートってやつか? 社会のゴミだな」

こういう手合いは、相手にしないに限る。

「なんだ、言い返しも出来ないのか? やっぱダメな奴はなにやらしてもダメだな」

そう言ってせせら笑うおっさんに、俺は聞こえるようワザと大きなため息をついてやった。

三月の空は薄汚れたかすれ雲をいつまでも抱きかかえている。