「じゃあみんな、まずは机動かして班つくってくれ。それから移動して、それぞれ見学の時のグループでくっつくように」
先生の指示と同時に、みんなが机を動かしはじめる。俺も近くのやつらと机をくっつけて班をつくった。
それから一斉に移動して、同じ班のメンバーで固まり、ペアになる女子グループを決める。
教室じゅうを視線が飛び交うのが分かった。
一番やりやすそうなグループはどこか、気の合うメンバーがいるのはどこか、品定めをしているのだ。
さらに言えば、気になる相手や好きな人がいるグループを確かめているやつもいるだろう。
そう言う俺も、気がついたら、加納さんがいるグループを視界の端で確認してしまっていた。
彼女は、ときどき会話をしている少し大人しい感じの女子たちのグループに入っている。
「な、どこと組む?」
「あー、小川のとこがよくね?」
「そうだな、誰か声かけてこいよ」
祐輔や聡太たちが話し合っている。
小川さんのグループというのは、クラスの中でも一番派手で目立つ女子たちだ。
正直なところ俺は、加納さんたちのグループがいいな、と思っている。
別に、加納さんと一緒にやりたいから、とかではなく――いや、それも少しはあるけれど――ただ俺は、華やかで元気のよすぎる女子は苦手なので、落ち着いて話し合えそうな女子たちのグループがいいなと思ったのだ。
でも、転校してきたばかりの俺がグループ決めに口出しなどできるわけがない。
もしかしたら、誰かの好きな女子があの中にいるのかもな、なんて思いながら、俺は黙って聞いていた。
「なあ、誰が行くんだよ?」
「お前、行けよ」
「俺は絶対ムリ! まともに小川と喋ったこともないから!」
「俺だってそうだよ」
「たのむ、祐輔行ってくれ!」
「えー? やだよ!」
しばらく押し付け合いをしているうちに、自然とみんなの視線が俺に集まった。
「……えっ? お、俺?」
思わず訊くと、みんなが一斉に手を合わせた。
「涼、たのむ!」
「俺らヘタレだからムリなんだよ!」
「涼ってなんか女子と喋るの得意そうじゃん」
「こないだも長野たちと仲良さげに喋ってたしさぁ」
頼み込むように言われて、俺は「ええ?」と返した。
「べつにそんなことないよ。ただ、転校生だから向こうから興味で話しかけてくるだけで………」
「でも、俺らより絶対できるって!」
「そうそう。頼む! 一生のお願い!」
「ええー、マジか。マジか……」
容赦ない攻勢に困り果てて頭をかいたものの、もともと頼まれると断れない質なので、結局俺が代表して声をかけに行くことになってしまった。
重い足どりで、きゃっきゃと騒いでいる小川さんたちの班に近づく。あと数歩で声が届きそうなところまで来た、そのとき。
「真穂ー、俺らと組もうぜ」
俺よりも先に声をかけた男子がいた。
はっとして、不自然にならないように気をつけつつ足を緩め、様子を見守る。
真穂、と親しげに呼んで小川さんの肩に手を置いたのは、バスケ部の酒井だった。おしゃれで明るくて、クラスの男子の中心にいるグループのリーダー格だ。
小川さんはにっこり笑って顔を上げ、「うん、組もう組もう」と応えた。彼女の返事に同調するように、他の女の子たちも頷いている。