「……そろそろ帰ろうか。遅くなるといけないから」
百合の顔を見ていられなくなり、俺は目を背けて小さく言った。そのまま立ち上がって歩き出す。
「あ、うん」
彼女は少し驚いたような声でそう答えて、さくさくと砂を踏みながら俺の後ろをついてきた。
振り向けない。彼女の表情を確かめる勇気がない。
黙ったまま来た道を戻る。駅のエレベーターに乗ったとき、ちらりと見てしまった鏡に映る彼女の顔が、不安そうに曇っているのに気がついた。
だめだ、何か話さないと。せっかく一緒に来たのに、嫌な思いはさせたくない。
俺は頭の中のスイッチを切り換えて、極力明るい笑顔と声を意識しながらどうでもいい話をした。学校の話、サッカーの話、テレビの話、漫画の話。思いつくままに勢いだけで話し続ける。
百合は曖昧な笑みを浮かべたまま、ときどき相づちを打ったりしつつ、澄んだ瞳でじっと俺を窺うように見ていた。
何もかも見透かされそうな気がして、ごまかすために必死に話題を絞り出す。
住む町に戻ってきたときには外はすっかり暗くなっていて、そして俺は喋りすぎてへとへとに疲れていた。
「じゃあ、また……」
まともに顔も見られないまま別れを告げようとしたとき、彼女が「待って」と遮った。
「もう少しだけ、話してから……」
俺は動揺と緊張でからからに乾いた喉から「うん」と絞り出した。
彼女がどんな話をするつもりなのか、怖くて仕方がなかった。でも、もうごまかしはきかないだろう。まっすぐすぎる彼女に、ごまかしは通用しない。
百合の顔を見ていられなくなり、俺は目を背けて小さく言った。そのまま立ち上がって歩き出す。
「あ、うん」
彼女は少し驚いたような声でそう答えて、さくさくと砂を踏みながら俺の後ろをついてきた。
振り向けない。彼女の表情を確かめる勇気がない。
黙ったまま来た道を戻る。駅のエレベーターに乗ったとき、ちらりと見てしまった鏡に映る彼女の顔が、不安そうに曇っているのに気がついた。
だめだ、何か話さないと。せっかく一緒に来たのに、嫌な思いはさせたくない。
俺は頭の中のスイッチを切り換えて、極力明るい笑顔と声を意識しながらどうでもいい話をした。学校の話、サッカーの話、テレビの話、漫画の話。思いつくままに勢いだけで話し続ける。
百合は曖昧な笑みを浮かべたまま、ときどき相づちを打ったりしつつ、澄んだ瞳でじっと俺を窺うように見ていた。
何もかも見透かされそうな気がして、ごまかすために必死に話題を絞り出す。
住む町に戻ってきたときには外はすっかり暗くなっていて、そして俺は喋りすぎてへとへとに疲れていた。
「じゃあ、また……」
まともに顔も見られないまま別れを告げようとしたとき、彼女が「待って」と遮った。
「もう少しだけ、話してから……」
俺は動揺と緊張でからからに乾いた喉から「うん」と絞り出した。
彼女がどんな話をするつもりなのか、怖くて仕方がなかった。でも、もうごまかしはきかないだろう。まっすぐすぎる彼女に、ごまかしは通用しない。