俺は歩く方向を微妙に変え、さも元からそちらに行くつもりだったかのような足どりで、前を向いたまま小川さんたちの班の横を通り過ぎた。だって、気まずいじゃないか。
目標の女子グループを素通りしてしまった俺の背中を、祐輔たちが固唾を呑んで見守っているのを感じる。
俺はそのままゆっくりと歩き続け、ぴたりと足を止めた。
目の前には、加納さんの姿がある。
彼女はグループの端のほうに座って、やっぱりいつものように、すこし視線を上のほうに向けてぼんやりしていた。
どくどくと心臓が高鳴る。俺は大きく息を吸いこんで、意を決して口を開いた。
「………俺たちと一緒にやらない?」
そう言った瞬間、加納さんの顔がすっと俺のほうを向いた。
同じグループの女子たちもーーたしか橋口さんや有川さん、竹田さんだったか、彼女たちも少し驚いたように俺を見上げている。
俺は精いっぱいの笑顔を浮かべて、
「よかったら、俺らのグループと組んでくれない? 高田とか吉川のグループなんだけど」
と言った。
俺は無意識のうちに、加納さんだけをじっと見つめていた。彼女は静かに俺を見つめ返していたけど、すっと視線を逸らして、橋口さんを見る。
橋口さんは小さく頷き、有川さんたちのほうを見た。みんなこくこくと頷く。
橋口さんが俺のほうを見て、小さな声で、
「じゃあ、よろしく……」
と答えてくれた。
それからすぐ、人見知りなのだろうか、恥ずかしそうに顔を背けてしまった。
加納さんが俺を見ている。どきどきしながら、俺は「ありがとう」と笑って、自分のグループに戻った。
「小川さんたちのグループ、酒井たちと組むみたいだから。
加納さんのとこに声かけてきた」
報告しながら座ると、祐輔が「うん、まあ、いいよ」と答えた。
「ありがとな、涼」
「どういたしまして」
若干の気まずさを感じながら話していたとき、先生が教壇の上で「おーい」と声をあげた。
「だいたいグループ組めたか? うん、大丈夫そうだな。じゃあ、それぞれ集まって、これからの話し合いをすること!」
担任の指示でみんなが動き始めた。
加納さんたちのグループが俺らのところにやってきて、「よろしくね」と控えめに言った。
祐輔たちも「よろしく」と落ち着かない感じで返している。
俺の斜向かいに、加納さんが座った。
こんなに近くに彼女がいるのは初めてかもしれない。
なんとなく、その姿を視界に入れるのが気まずくて、俺はずっと、反対の斜向かいに座っている聡太のほうに目を向けていた。
「じゃ、とりあえず、どんな係がいるか決めようぜ」
こういう場面でリーダーシップを発揮するのが得意な祐輔が、生き生きした感じで仕切りはじめた。俺は黙って様子を見守る。いくら馴染みつつあるとはいえ、転校生は出しゃばるわけにはいかないのだ。万が一にも、新入りのくせに自己主張してくる面倒くさいやつ、などと思われるわけにはいかない。
「じゃあ、図書館とかインターネットで調べる係と、お年寄りにインタビューする係と、調べたこと紙にまとめる係だな。発表は全員で。じゃ、希望の係がある人、手え上げて」
でも誰も名乗りを上げなかったので、結局祐輔が「俺が決めちゃっていい?」と適当に割り振ってくれた。その結果。
目標の女子グループを素通りしてしまった俺の背中を、祐輔たちが固唾を呑んで見守っているのを感じる。
俺はそのままゆっくりと歩き続け、ぴたりと足を止めた。
目の前には、加納さんの姿がある。
彼女はグループの端のほうに座って、やっぱりいつものように、すこし視線を上のほうに向けてぼんやりしていた。
どくどくと心臓が高鳴る。俺は大きく息を吸いこんで、意を決して口を開いた。
「………俺たちと一緒にやらない?」
そう言った瞬間、加納さんの顔がすっと俺のほうを向いた。
同じグループの女子たちもーーたしか橋口さんや有川さん、竹田さんだったか、彼女たちも少し驚いたように俺を見上げている。
俺は精いっぱいの笑顔を浮かべて、
「よかったら、俺らのグループと組んでくれない? 高田とか吉川のグループなんだけど」
と言った。
俺は無意識のうちに、加納さんだけをじっと見つめていた。彼女は静かに俺を見つめ返していたけど、すっと視線を逸らして、橋口さんを見る。
橋口さんは小さく頷き、有川さんたちのほうを見た。みんなこくこくと頷く。
橋口さんが俺のほうを見て、小さな声で、
「じゃあ、よろしく……」
と答えてくれた。
それからすぐ、人見知りなのだろうか、恥ずかしそうに顔を背けてしまった。
加納さんが俺を見ている。どきどきしながら、俺は「ありがとう」と笑って、自分のグループに戻った。
「小川さんたちのグループ、酒井たちと組むみたいだから。
加納さんのとこに声かけてきた」
報告しながら座ると、祐輔が「うん、まあ、いいよ」と答えた。
「ありがとな、涼」
「どういたしまして」
若干の気まずさを感じながら話していたとき、先生が教壇の上で「おーい」と声をあげた。
「だいたいグループ組めたか? うん、大丈夫そうだな。じゃあ、それぞれ集まって、これからの話し合いをすること!」
担任の指示でみんなが動き始めた。
加納さんたちのグループが俺らのところにやってきて、「よろしくね」と控えめに言った。
祐輔たちも「よろしく」と落ち着かない感じで返している。
俺の斜向かいに、加納さんが座った。
こんなに近くに彼女がいるのは初めてかもしれない。
なんとなく、その姿を視界に入れるのが気まずくて、俺はずっと、反対の斜向かいに座っている聡太のほうに目を向けていた。
「じゃ、とりあえず、どんな係がいるか決めようぜ」
こういう場面でリーダーシップを発揮するのが得意な祐輔が、生き生きした感じで仕切りはじめた。俺は黙って様子を見守る。いくら馴染みつつあるとはいえ、転校生は出しゃばるわけにはいかないのだ。万が一にも、新入りのくせに自己主張してくる面倒くさいやつ、などと思われるわけにはいかない。
「じゃあ、図書館とかインターネットで調べる係と、お年寄りにインタビューする係と、調べたこと紙にまとめる係だな。発表は全員で。じゃ、希望の係がある人、手え上げて」
でも誰も名乗りを上げなかったので、結局祐輔が「俺が決めちゃっていい?」と適当に割り振ってくれた。その結果。