庭の地面にノートを重ねて置いた祥が、ライターに火を灯す。
「本気で燃やすの?」
「うん」
「こんなの、よく何年も書き溜めてたよな。正直、重いわ」
「あたしもそう思う」
冗談交じりに笑う俺を見て、祥が泣きそうに笑った。
祥の持っていた三冊のノートに書かれていたのは、殆どが俺への恋心。十年以上分の想いが詰まったラブレターだ。重いなんて言ったのは建前で、それを読んだ俺は本気で泣きそうだった。
「これを読ませて、結婚したあとも俺の心を繋ぎ止めようと思ったの?」
「違うよ。ずっと繋ぎ止められてたのはあたしなの。もう何年も」
そう言いながら、祥がノートに火をつけた。