《三月三十日》
今日は、優也の引越しの日だった。
家から通える大学に行くと思ってたのに、優也は東京の大学に行くことに決めていた。
お父さんもお母さんも知ってたのに、あたしは二月になるまでそのことを知らなかった。
これからもずっと同じ家に一緒に住めると思ってたから、今もまだ気持ちの整理がつかない。
ぎりぎりまで東京行きを教えてくれなかった優也のこと、怒ってる。
怒ってるし、めちゃくちゃ淋しい。だけど、優也がいなくなってせいせいしてるって顔で、笑って見送った。
最後に優也とふたりで話したときに、少しだけ期待した。
優也がもう一回好きって言ってくれないかなって。もしもう一回好きって言われたら、そのときは……。
そんなことを考えたけど、優也は何も言わなかったし、あたしも何も言えなかった。
やっぱり、りっちゃんが言ってたみたいに、いちばん好きな人とは結ばれない。運命って、そんなふうに決まっているのかもしれない。