《八月八日》

加藤くんと花火大会に行った。花火はすごく綺麗だった。でもそれより、もっとずっと大変で困ったことが起きた。
花火大会の帰り道に優也に会って、なんかいろいろあって、ケンカになって。ケンカしてるはずなのに、優也が急にあたしが好きだと言ってきた。家族の好きじゃなくて、恋愛感情なんだって。
ふざけてるんだと思ったけど、優也が抱きしめてきたからドキドキした。死ぬかと思った。
本気なのか冗談なのか全然わかんない。
あたしたち家族じゃんって笑ったら、優也は泣きそうな顔してた。
今日は結婚記念日だから、外にふたりでごはんを食べに行ったお父さんとお母さんはにこにこしてた。でも、あたしは全然笑えない。優也も笑っていなかった。
八月八日は末広がりの日で、幸せを引き寄せるのに。
あたしはどうしたらいいかわからない。
優也に家族だって言ったのは違ってたのかな。
今日は優也とも家族になれた日なのに。間近で見れた花火はすごく綺麗だったのに。
優也が泣きそうだから、あたしも泣きそうだ。