「お団子がひとつ余ったわね。孝義(たかよし)はもういらないと言っているし……。どうする、あや?」
弟の孝義は、団子はあまり好物ではないのかいつも残す。
ひとつ残った団子をめぐり、姉妹喧嘩が勃発した。
「この前は初子さんが食べたでしょ? 今日は私」
「そうだっけ? でも、かりんとうはひとつ多めにあげたじゃない」
「私、かりんとうよりお団子のほうが好きなの。初子さんもそうでしょ?」
私と初子さんの喧嘩の声は、廊下まで響く。
すると女中頭のまつが飛んできた。
もうすぐ四十になる彼女は、二十年近く前から一橋家に仕えていて、私たちの世話も彼女が中心になってしてくれる。
「まあまあ、喧嘩なんておやめくださいませ。おふたりは、一橋家のご令嬢なんですから」
まつは『ご令嬢』と口にするものの、一橋家は落ちぶれること甚だしい。
弟の孝義は、団子はあまり好物ではないのかいつも残す。
ひとつ残った団子をめぐり、姉妹喧嘩が勃発した。
「この前は初子さんが食べたでしょ? 今日は私」
「そうだっけ? でも、かりんとうはひとつ多めにあげたじゃない」
「私、かりんとうよりお団子のほうが好きなの。初子さんもそうでしょ?」
私と初子さんの喧嘩の声は、廊下まで響く。
すると女中頭のまつが飛んできた。
もうすぐ四十になる彼女は、二十年近く前から一橋家に仕えていて、私たちの世話も彼女が中心になってしてくれる。
「まあまあ、喧嘩なんておやめくださいませ。おふたりは、一橋家のご令嬢なんですから」
まつは『ご令嬢』と口にするものの、一橋家は落ちぶれること甚だしい。