私、新島(にいじま)結依(ゆい)は大手プラントメーカーに勤める二十七歳の若きエンジニアだ。今担当しているのは中東の石油掘削用プラットホームの建設で、洋上生活をしている。既にこの海域にはいくつかのプラットホームが建設されており、油井(ゆせい)が掘られている。

 目の前に高くそびえる洋上石油プラットフォームは先日、無事に石油層まで到達したばかりだ。高さは五十メートルほどあり、高層ビルに匹敵するほどだ。
 そこからは太い筒状のものが海面へと伸びている。ついこの間まではこれの先端にはビットと呼ばれるドリルを付け、高速回転しながら地中を掘り進めていた。今は自噴し出した石油を回収するためのパイプラインが挿入され、周囲には石油を回収するためのパイプ、ボイラー、ろ過装置、発電用タービンなどが配置され轟音が鳴り響いていた。

「コレ、ヤスイネ」
「うーん」
「オクサマ、ニアウネ」
「うーん」

 五分以上経っているのに、田宮さんは未だに男性と話し込んでいる。