そこには、まるで城のような不思議な建造物も、先に落ちたはずのユィもなかった。ただ広がるのは、一面の砂漠。

 異世界から来たみたいだとは本人からは聞いてはいた。いくら魔法でもあんな一瞬にして転移することは不可能だ。となると、考えられるのは失われた古代魔術だ。異世界から召喚する術があると聞いたことがある。

 別の世界から突如現れ、また消えたということは元の世界に戻ったのだろうか。だが、いずれにせよ、調べればまた呼び戻す方法もあるはずだ。それに、ユィは自分の魔力を込めたブレスレットをしている。

「たった一人を、か。いいだろう。待ってろよ、ユィ」

 驚くような知識を持ち、風変わりで飽きない女。今まで出会ったどの女より強く惹き付けられた。