体を支えるのは左手だけ。左手にいつも付けているハムサが目に入る。魔よけなら私を守ってくれ!
 下を見ると砂漠が広がっているのが見えた。高さは十五メーターくらいある。落ちたらただでは済まないだろう。

「ユィ! 手を!」

 アルフルダがプラットフォームの隙間から体を乗り出し、必死に手を伸ばす。私も必死で右手を伸ばした。あと少し、あと少し、が届かない。再び轟音が響き、揺られた弾みにプラットフォームの端になんとか掛かっていた手がするりと抜けた。

「ユィ!!」

 落ちてゆく私を見つめるアルフルダの目が驚愕で見開く。

 あ、ヤバい。これ、死んだな。

 散々世話になったことだし、最後くらい、なんか気の利いた言葉をあの若者に……。

「男だったら、たった一人を宇宙一幸せにして見せやがれー!!」

 全くトンデモナイ別れの言葉だった。


    ◇ ◇ ◇