結局、私はアルフルダの言葉を真剣に受け取ろうとしていないのだ。
 今は物珍しい女でも、徐々に物珍しさはなくなる。この世界にはない知識も、いつかは全てを伝え終える。そのとき、アルフルダは変わらず私よりも八歳若くて、沢山の美しい妻に囲まれ、金と権力も持っている。

「では、せめて護りの加護を」
「護りの加護?」

 私は聞き慣れない単語に首を傾げる。
 
「ニージマユィに何かがあったとき助けたり、その居場所を探し出したりできるものだ。それくらいは許せ。そのブレスレットを借りても?」

 アルフルダは私がいつも付けているハムサを指さす。

「はい」

 私はハムサを外してアルフルダに手渡す。手のひらに載せるとき、金属がぶつかるチャリンという音がした。
 アルフルダはハムサを握り込み、何かを呟く。そして手を開いたとき、ハムサを彩る青い石のひとつが鈍く輝いていた。