いやいや、待ってくれ。驚いたのはこっちだよ。いつの間にマッチ擦ったの? 全く見えなかったんですけど。

 しかし、そんなことよりそれを見て瞬時に閃いた。
 この男は地元の有力者なのだから、これはチャンスなのでは!?
 悲しきかな、骨の髄まで染み付いたサラリーマン根性。息を吸うがごとく自然に胸ポケットに手が伸びる。

「私、こういうものです」

 この機会を逃すまいと、すかさず名刺を差し出す。
 この男、若いのに突然人様のプラットフォームに訪れてこの態度のでかさは相当な大物に違いない。ここは我が社の高い技術力を売り込んで、次なるプロジェクトへと繋げようではないか。