男の眉がピクリと動く。

「石油? ここで石油は出ない」
「出ますよ。ほら」

 私は只今絶賛採掘中の原油を貯蔵したタンクを指差す。真っ黒な液体は不純物が混じっているものの、紛れもない原油だ。

 石油掘削の際、必ず現れるのが「ここで石油は採れない」と主張する地元有力者だ。この男もその類いに違いないとすぐにピンときた。

 男は連れの部下らしき男に顎で合図すると、その男が棒に石油を少しだけ付ける。男が手をかざした次の瞬間、棒の先が激しく燃えだした。

「驚いたな……」

 男の表情に驚愕の色が浮かぶ。