僕は大きくつばを飲み込む。
「高校入ってすぐの頃にさ」
「うん?」
彼女が首をかしげる。
「一度、誘ってくれたでしょ」
「あ、うん」
自分でも不思議だった。
いままでずっとトラウマになってて、心の奥底の薄暗い地下の蔵の中みたいなところに閉じ込めていた記憶に、今頃自分から手を伸ばすなんて。
「あのときはごめん」
「何が」
「いや、なんか、いろいろと」
「いろいろって?」
一穂は穏やかな表情をしたまま、見守るように僕の言葉を待った。
「正直にいうと、そのいろいろがわかってなくて、いつか聞かなきゃって」
「ええー、何それ」
突然彼女が笑い出す。もっと深刻な話だと身構えていたのだろうか。空気の抜け始めた風船のように肩を震わせて。
「教えてくれないかな。あのときのこと」
「わたしがどう思ってたかってこと?」
「うん」
一穂はまた、ふふふと笑った。
「一年以上も前の初デートの反省、いまからするの?」
「ダメかな」
顔に熱が帯びる。
「ううん、ダメじゃないけど」
一穂は首を横に振ってから、
「でも、なんで?」
と聞いた。
「高校入ってすぐの頃にさ」
「うん?」
彼女が首をかしげる。
「一度、誘ってくれたでしょ」
「あ、うん」
自分でも不思議だった。
いままでずっとトラウマになってて、心の奥底の薄暗い地下の蔵の中みたいなところに閉じ込めていた記憶に、今頃自分から手を伸ばすなんて。
「あのときはごめん」
「何が」
「いや、なんか、いろいろと」
「いろいろって?」
一穂は穏やかな表情をしたまま、見守るように僕の言葉を待った。
「正直にいうと、そのいろいろがわかってなくて、いつか聞かなきゃって」
「ええー、何それ」
突然彼女が笑い出す。もっと深刻な話だと身構えていたのだろうか。空気の抜け始めた風船のように肩を震わせて。
「教えてくれないかな。あのときのこと」
「わたしがどう思ってたかってこと?」
「うん」
一穂はまた、ふふふと笑った。
「一年以上も前の初デートの反省、いまからするの?」
「ダメかな」
顔に熱が帯びる。
「ううん、ダメじゃないけど」
一穂は首を横に振ってから、
「でも、なんで?」
と聞いた。