僕は屋上に着くと、塔屋の内壁に立てかけておいたベニヤ板を引っ張り出して、作業にかかった。
同じ大道具メンバーである後輩たちもすでに来ていて、各々自由に陣取って準備をしていた。僕は彼らから離れたいつもの指定位置に腰を下ろす。
それから新聞紙を敷いて、ベニヤを寝かせ、脇にペンキの詰まった缶やら大工道具を並べた。
次の舞台に向けて準備期間は十分にあった。
だからこそ、今回はいままでにないくらい工夫して、手をかけてみようって思う。そう考えたのは、後輩の書いた脚本がよくできていたから。
次の作品、僕は舞台上に象徴的なモニュメントを配置してはどうかと意見した。
なんでそう思ったのかと、感じたテーマとお客さんへの見せ方と、装置としての演出効果と、ちゃんと伝わるように、丁寧に。そうしたら部長もみんなも脚本担当の後輩も、みんなすごく賛同してくれて。
これはもう、やってやろうと。
「――いくん」
作業に没頭していたせいだろう。
「ねえ」
何度か呼び直されるまで、背後から掛かる声に気づかなかった。
「ねえ、藤井くん」
膝をついたまま振り返ると、一穂が立っていた。
同じ大道具メンバーである後輩たちもすでに来ていて、各々自由に陣取って準備をしていた。僕は彼らから離れたいつもの指定位置に腰を下ろす。
それから新聞紙を敷いて、ベニヤを寝かせ、脇にペンキの詰まった缶やら大工道具を並べた。
次の舞台に向けて準備期間は十分にあった。
だからこそ、今回はいままでにないくらい工夫して、手をかけてみようって思う。そう考えたのは、後輩の書いた脚本がよくできていたから。
次の作品、僕は舞台上に象徴的なモニュメントを配置してはどうかと意見した。
なんでそう思ったのかと、感じたテーマとお客さんへの見せ方と、装置としての演出効果と、ちゃんと伝わるように、丁寧に。そうしたら部長もみんなも脚本担当の後輩も、みんなすごく賛同してくれて。
これはもう、やってやろうと。
「――いくん」
作業に没頭していたせいだろう。
「ねえ」
何度か呼び直されるまで、背後から掛かる声に気づかなかった。
「ねえ、藤井くん」
膝をついたまま振り返ると、一穂が立っていた。