「小説は? 書いてんの?」
 楓のやつ、やたら僕に小説を勧めてくる。
「いや、いまは次の脚本の構想練ってる」
「四度目の正直狙い?」
 こいつ、マジで遠慮がない。
「何度目とか関係ないんだよ。書きたいから書くんだ」
 僕は語気を強めた。
 そうだ、落選しようがなんだろうが、挑戦あるのみだ。
 いままで全部自分の思ったことだけ書いてきたけど、今度は演劇部のみんなが演じてる姿を想像して、キャラを当て書きしてみようと思っている。
「書いたら読んでやろうか」
 楓がニヤつきながら言った。
「興味ねえだろ」
「まあな」
「じゃあ言うなよウゼエ」
「フッ。じゃーな」
 ちょうど階段の踊り場までやってきて、僕は屋上、楓は体育館へと別れる。
 ヤツは手をひらひらさせて階下へ降りていった。
 なんか楽しそうに口笛吹いて。