ゆずきはどこに向かったんだ。
消えた背中を探し求めて自然公園の中をひた走った。
日は地平線間際まで沈み、あたりはそろそろ夕闇に包まれようとしていた。
西のオレンジと頭上の紺。マジックアワーってやつだ。
ひょっとしたら……こんなきれいなグラデーションの空を見上げて、ゆずきとふたりで舞台の成功を祝ってた未来だってあったかもしれないのに。
茂み、花壇、オブジェの近くと、ゆずきを探して必死に園内を走った。
どこ行っちゃったんだよ。
ゆずきだけでなく、近辺にはもう、他の人影もなかった。
すでにこの公園にはいないのか。
足から力が抜けそうだ。
僕は公園の中央、噴水広場に来ていた。ただ噴水は停止していて、水面が静かに闇を待っている。
と――、
踏ん張り直したとき、視線の先に見慣れた制服を見つけた。
でもそれは横たわっていて……、
「ゆずっ!」
僕は急いで地面に倒れているゆずきに駆け寄った。
「ねえ、ゆず、どうしたの!」
彼女の肩を抱き、上体を起こした。
ゆずきが閉じていた目をうっすらと開く。
「……コウくん」
消え入りそうな声。
彼女はかすかに笑みを浮かべた。
「大丈夫?」
聞いておきながら気づいた。大丈夫なわけないだろって。
ゆずきのうなじに髪が張り付いていた。首筋が汗で湿っている。
額に触れた。
「えっ」
すごい熱だった。