こうして彼女とばっちり目を合わせて言葉を交わすのはいつぶりだろう。 ひょっとしたらゆずきが現れたとき以来かもしれない。
「また素敵なお話書いてもらえませんか」
彼女の頬は少し紅潮していた。
「できたら今度は、ゆずきとわたしのダブルヒロインで」
そうか、この付け足し部分を口にするのが照れくさかったのか。
…………。
なんて言えばいいんだろう。一穂はとても意地らしい表情を浮かべている。
昨年の春に出会ってから、初めて彼女の素の表情を見たのかもしれない。
それって別に、一穂が今まで隠してたからとか、見せずにいたからとか、そういうことじゃなくて、たぶん僕が気づかなかっただけなんだろう。
「コウくん大好き」
ゆずきが僕に甘える。
彼女らしくない振る舞いだ。
自分で小説に書いておきながら、うすら寒かった。
一穂の心にゆずきへの妬みなんてなかった。
僕が勝手に一穂を悪い女に仕立て上げて、悶々とした気持ちの憂さを晴らそうとしてただけなんだ。
「コウくん、ずっと一緒だからね」
ゆずきが僕の腕に、自分の胸を押し当ててくる。
いいかげん、離れたい。僕は彼女から腕を抜こうとしたが、ゆずきのほうは一向に離れようとしない。
「また素敵なお話書いてもらえませんか」
彼女の頬は少し紅潮していた。
「できたら今度は、ゆずきとわたしのダブルヒロインで」
そうか、この付け足し部分を口にするのが照れくさかったのか。
…………。
なんて言えばいいんだろう。一穂はとても意地らしい表情を浮かべている。
昨年の春に出会ってから、初めて彼女の素の表情を見たのかもしれない。
それって別に、一穂が今まで隠してたからとか、見せずにいたからとか、そういうことじゃなくて、たぶん僕が気づかなかっただけなんだろう。
「コウくん大好き」
ゆずきが僕に甘える。
彼女らしくない振る舞いだ。
自分で小説に書いておきながら、うすら寒かった。
一穂の心にゆずきへの妬みなんてなかった。
僕が勝手に一穂を悪い女に仕立て上げて、悶々とした気持ちの憂さを晴らそうとしてただけなんだ。
「コウくん、ずっと一緒だからね」
ゆずきが僕の腕に、自分の胸を押し当ててくる。
いいかげん、離れたい。僕は彼女から腕を抜こうとしたが、ゆずきのほうは一向に離れようとしない。