じゃあ、いいさ。
「ゆずき、楓が来てたこと知ってたの?」
 ふつうだったらこんな質問、絶対にしない。てか、怖くてできない。
 でもいまは違う。
 僕は小説に書いた。
 どんな事情があってもゆずきの僕への気持ちは揺るがない。僕のことが好きでたまらないんだ。
 そう確信してるから、堂々と聞いた。
「うん」
 ゆずきはためらいもなく、あっけらかんと答えた。
「楓くん、わたしたちの舞台、観てくれたんだよ」
 うれしそうな顔をしている。
「へえ。楓ってそういうの興味ないと思ってたけどな」
 わざと嫌味っぽく言ってみた。
「ちょっと誘われたから」
 楓が視線を落とした。なんだよ、そのぶっきらぼうな口調。
「ゆずきに?」
「いや、別の知り合い」
 そうか……。正直、ほっとした。心の中のしこりがほぐれた感じだ。
楓に演劇部の知り合い? 聞いたことがない。でもまあ、部内でこいつに好意を寄せる女子がいてもおかしくはないか。ただ、その誘いに楓が乗ったのは意外だけど。
「で、ゆずきは楓と何を話してたの?」
 直球を投げた。
「え」
 彼女はたじろいだ。まさか楓とふたりで話してたのを見られてたなんて、という驚きが表情に出ている。
「それは……」
 ゆずきが言いよどむ。
「僕に言いにくいこと?」
 ごくり、と唾を飲みこんだ。