仮にも女子たちがもてはやす楓だ。ゆすきが楓をどう思っているかなんて考えたこともなかったけど……もしもゆずきが僕に対して寂しさを感じていたら？
　胸がチクチクする。
　ゆずきが寂しいかもって思ってる自分を、僕は認めてるのか。

　…………。

　そうだ。そうなんだ。
　だって僕は……自分がゆずきの成功を心から喜んでないことに気づいてしまったから。
　僕は彼女の成功を祝福するよりも先に、自分の不成功を嘆くようなやつだから。
　そんな僕にうんざりして楓に揺らぐことだって、ないとは言えないかもしれない。
　一穂に愛想を尽かされて、今度はゆずきにも……。
　茂み越しに様子を窺っていた自分がとても哀れな存在に思えて、急に恥ずかしくなった。
　くそう。
　なんなんだ。
　その場で足を止めた。
　楓の野郎、バスケバカじゃなかったのかよ。
　それに、ゆずきだって。
　なんで……。
　なんで楓なんかに気安く笑いかけるんだよ。
　そもそもゆずきは僕の理想の女の子だろ。
　僕の頭の中で生まれて僕の小説通りに振る舞ってきたんだろう。
　それなのに、なんなんだよ。
　なんで僕がこんなに苦しんでるんだ。
　ちくしょう……。
　ちくしょう、
　ちくしょう！
　ちくしょうっ！！
　僕は茂みに背を向けたまま、ズボンのポケットからスマホを取り出した。
　そして小説エディタを起動すると、物語を書き足した。