「お? お前のも、完成に近づいてる?」
現れたのは、山崎だった。
夏なのか秋なのか分からないような季節。
一人きりの理科室ではエアコンが寒すぎるから、俺はもう長袖のシャツを着ているのに、コイツは半袖のままだった。
「もうとっくに出来てるし」
山崎がスイッチを押すと、白球はカシャンという音と共に飛びだし、見事に動かない的の中心に当たって落ちた。
「お、さすが」
山崎はそれからしばらく、マシンをひっくり返したり、パソコンのプログラムをのぞいたりして、何かを一人でしゃべり続けていた。
「で、そっちはどうなの?」
俺がそうやって聞いたら、彼はようやく顔を上げて、こっちを見た。
「かんっぜんに、行き詰まってた」
「た?」
「た」
彼らのマシンは、的の横幅のサイズを規準に、その中央に固定してスタート位置に設置される。
そこから規定の的の高さに合わせて、あらかじめプログラムされた角度とスピードで、弾を撃ち出す仕組みだった。
「それがね、うまくいかないの。ローラーの回転数を左右で変えて、発射する角度をつけてるんだけどさ、どうしても詰まっちゃうんだよね、弾が間に挟まるの。ローラーの。それで発射してくんないの」
回転速度を変えると、的には当たらないし、弾は詰まるしで、どうにもならない状態だったらしい。
「だけどさ、やっぱ鹿島って、すごいよな」
結局その話になるのか。俺は立ち上がって、自分のマシンを手に取った。
俺だって、あいつに負けるつもりはない。
「あいつのお父さん、工学部の大学教授だってよ」
「は? なんだそれ」
「で、一発解決」
ローラーの材質のグリップ力だとか、摩擦係数だとか、鹿島は、なんだかよく分からないことをブツブツ言いながら、彼の父親が提案したらしいメモを片手に、ローラーの幅なんかを微調整していくうち、実にあっさりと問題をクリアしたらしい。
「パソコンのプログラムなんかもさ、ちゃちゃっと書き換えて、お終いよ。なんか、メーカーによって専門のソフトってのがあるみたいでさ、全く新しいのを、最初っから全然別ので作ってきて、それで動かしたら、まぁ素直に動くもんだ。すげーよな。なんか色々と話し聞かされて説明もされたけど、俺にはよく分かんなかった」
「それってなんかズルくね?」
「だけど、出来ちゃったもんは出来ちゃったし」
山崎と目があう。
確かにアドバイスを受けたのは事実かもしれないが、そこにいたるまでの作業と、実際にマシンに調整を加えたのは、鹿島自身だ。
現れたのは、山崎だった。
夏なのか秋なのか分からないような季節。
一人きりの理科室ではエアコンが寒すぎるから、俺はもう長袖のシャツを着ているのに、コイツは半袖のままだった。
「もうとっくに出来てるし」
山崎がスイッチを押すと、白球はカシャンという音と共に飛びだし、見事に動かない的の中心に当たって落ちた。
「お、さすが」
山崎はそれからしばらく、マシンをひっくり返したり、パソコンのプログラムをのぞいたりして、何かを一人でしゃべり続けていた。
「で、そっちはどうなの?」
俺がそうやって聞いたら、彼はようやく顔を上げて、こっちを見た。
「かんっぜんに、行き詰まってた」
「た?」
「た」
彼らのマシンは、的の横幅のサイズを規準に、その中央に固定してスタート位置に設置される。
そこから規定の的の高さに合わせて、あらかじめプログラムされた角度とスピードで、弾を撃ち出す仕組みだった。
「それがね、うまくいかないの。ローラーの回転数を左右で変えて、発射する角度をつけてるんだけどさ、どうしても詰まっちゃうんだよね、弾が間に挟まるの。ローラーの。それで発射してくんないの」
回転速度を変えると、的には当たらないし、弾は詰まるしで、どうにもならない状態だったらしい。
「だけどさ、やっぱ鹿島って、すごいよな」
結局その話になるのか。俺は立ち上がって、自分のマシンを手に取った。
俺だって、あいつに負けるつもりはない。
「あいつのお父さん、工学部の大学教授だってよ」
「は? なんだそれ」
「で、一発解決」
ローラーの材質のグリップ力だとか、摩擦係数だとか、鹿島は、なんだかよく分からないことをブツブツ言いながら、彼の父親が提案したらしいメモを片手に、ローラーの幅なんかを微調整していくうち、実にあっさりと問題をクリアしたらしい。
「パソコンのプログラムなんかもさ、ちゃちゃっと書き換えて、お終いよ。なんか、メーカーによって専門のソフトってのがあるみたいでさ、全く新しいのを、最初っから全然別ので作ってきて、それで動かしたら、まぁ素直に動くもんだ。すげーよな。なんか色々と話し聞かされて説明もされたけど、俺にはよく分かんなかった」
「それってなんかズルくね?」
「だけど、出来ちゃったもんは出来ちゃったし」
山崎と目があう。
確かにアドバイスを受けたのは事実かもしれないが、そこにいたるまでの作業と、実際にマシンに調整を加えたのは、鹿島自身だ。