「そっか。まぁいいんじゃね?」

それは好きにしろよっていう、そういう意味だ。

山崎は「うん」と言って肯いた。

組んだ指がもぞもぞと動く。

「お前の方は、上手くいってるの?」

「谷先輩に、見てもらったし」

「出来そう?」

「まぁ、なんとかね」

もぞもぞと動く山崎の指をみているうちに、昼休みは終わってしまった。

だけど、なんとなく山崎の話を聞いて、1年どもの進行具合は分かった。

理科室のパソコンに保存されている、あいつらの設計図を見る。

ピンポン球を飛ばすローター部分の材質は、どうしたんだろう。

ゴムみたいなものにするんだろうけど、自作は難しいよなぁ。

あ、でも、車輪みたいなリングに、でっかい輪ゴムつければ、何とかなりそうだなー。

光る画面の中に存在する電子の線は、何も教えてくれないけど、俺は想像する。

マシンの移動は、距離センサーかエンコーダー、それともライントレース?

あいつなら、距離センサーかエンコーダーを使うだろうな。

エンコーダーだな、きっと。

俺も原始的なレールなんか引くんじゃなかった。

ライントレースくらいに、すればよかったな。

まぁ、でもそれは人海戦術でいかないと、本番でなかなか面倒くさいし。

あー、でも、今回は一直線でよかったんだから、やっぱりライントレースかなぁ。

一人じゃ出来ないことでも、仲間がいれば出来る。

俺がこうして考えている間にも、コンピューター制御の動作プログラムを組むこともできるし、マシンの発射位置の微調節だって出来る。

同時に複数のことが、きちんと進行している。

それが俺には、奇跡のように感じた。

この世の全てを知ることなんて出来ない。

だけど、自分の知らないところで世界が進んでいくことが、許せなかった。

マシンを取り出し、ようやく制御できるようになったシリンダーを取り付ける。

まだ本体とも言い難いような、動かない足回りだけの骨組みに、それをはめ込んで止めた。

ボールを飛ばすためのラインがむき出しのそこに、初めての弾をおく。

スイッチを入れると、レールから飛び出した白球は、想像以上に力強く外に飛び出した。

その元気のよさに、思わず笑う。

そうだよな、的を倒さないといけないから、強めに設定したんだった。

飛距離はそのままで、もう少し高さを調整しよう。

まるで俺みたいなマシンだ。

勢いだけで、的外れ。

俺が一人で作ってるんだから、当たり前か。

さぁ、次は何だ。

何をどうすればいい? 

俺のマシンは、俺からの次の指示を、まだかまだかと待ちわびているように見えた。

早く作ってくれよ。

かっこよく頼むぜ。

それで俺と一緒に、世界を無双しようぜ。

俺は笑って、次の作業を開始した。