真っ白な紙が、本当に真っ白でまぶしい。

谷先輩に言われて初めて見た時って、最初にどんなマシンを思い描いたっけ。

わずか数ヶ月前の出来事を、頭に蘇らせる。

俺の出したアイデアを、山崎がことごとく否定してきて、結局やらないって、なったんだよな。

俺はその時の光景を思い出して、ふっと笑った。

谷先輩の、がっくりとした後にすぐ笑って「お前らってそういう奴らだったよな」って、許してくれた笑顔を思い出す。

すみませんでした。

あの時、もっと真面目にやっていれば、後から来た鹿島なんかに、ナメられたりしなかったのに。

俺はペンを握りしめた。

もう下書きなんてしてる場合じゃない。

新しい用紙は事務課にまだある。

ぐちゃぐちゃでもいい、間違っててもいい、とにかく何かを完成させて、やれるだけのことはしておきたかった。

自分の頭の中だけで考えたアイデアを、黙々と書き込んでゆく。

これでダメなら、それでいいじゃないか。

俺自身がそこまでだったってことだよな。

鹿島に対する感情が、ただの嫉妬かヤキモチだけだなんて、そんな風には思いたくない。

鹿島たちが何日も時間をかけて書き上げた企画書を、俺はたった1日、2、3時間程度の仕上がりで完成させた。

どうせ認められないだろうし、「ここまでは頑張ってやりました」でお終いだと、そうタカをくくって出した企画書が、驚いたことに、そのまま通過した。

「お前、なにやってんだよ!」

再び二人だけになった理科室で、山崎が叫ぶ。

「こんなことするくらいなら、あいつらと一緒にやってた方がマシじゃねーか!」

「マシとはなんだ、マシとは!」

俺が言い返したら、山崎はイライラと頭を横に振った。

「だからなんでお前はそう後から後から……、どうしてこうも、融通が利かねぇんだよ!」

そんなことを今さら言われても、もう提出してしまったものは仕方がないし、通ってしまったものは、やるしかない。

「大体、企画書出すぞって、お前にも宣言しただろ」

「だからってさぁ!」

山崎が何を怒っているのか分からなかったが、やると決まった以上はやるしかない。

戻ってきた企画書には、審査した主催者側からの、簡単なアドバイスが添えられていた。

『色々と重要な改良すべき点がいくつもあり、前途多難だと思いますが、熱意だけは伝わってきました。頑張ってください』

山崎が吠える。

「バカにされてんだろ!」

「そうか? 俺には励ましに見えるけどな」

とにかく赤字で、あちこちに書き込みがされている。

これに従って直していけばいいのだから、ある意味楽勝だ。