翌朝の俺は、勢いよく電車に飛び乗った。

奥川に会うかと思ったけど、今日は一緒にならない。

早く奥川か山崎の顔が見たかった。

夜には携帯に何か連絡でも入るかと、ずっと待っていたけど何もない。

学校に着いても、二人の様子はいつもと変わることはなかった。

こんなことを気に掛けているのも、俺だけか。

そう思うと、少しは気が軽くなる。

「おはよー」

俺は努めて冷静を装い、部活の話題を出さないまま、クラスで山崎に接する。

それは理科室に行ってもかわらなかった。

1年は顔を出してもすぐに出て行ったし、鹿島自身も、特に変わった様子を見せてはいなかった。

俺は静かになったこの場所で、満足していた。

本当にあきらめたのかな? 

俺はそのまま、無関心を装っていた。

そんなこんなで時間の過ぎるうち、俺の知らないところで、作戦は密かに実行されていたらしい。

ニューロボコンの参加に必要なマシンアイデアや基本設計、競技戦略を記載した用紙が、いつの間にか大会本部に提出されていた。

あいつら、どこでそんなことやってたんだ。

図書室か。

「はーい、こっち向いて下さーい」

そのおかげで、生徒会本部役員どころか、地元の新聞社とテレビ局までもが取材に来ている。

にっこりと笑ってカメラに収まるのは、もちろん1年生軍団と、なぜかそこに奥川も含まれていた。

外された山崎は、むせび泣いている。

「ねぇ、なんで俺は呼ばれなかったんだと思う? ねぇ、なんで?」

よい学校宣伝になるからと、よく分かってもいない学校事務員が、普段は息もしていない顧問と、校長まで呼んで、日常とは全く異なる異質な風景をカメラに収めていく。

「部長の俺だって、取材の集合時間を知らされてなかったんだ。お前なんて、外されて当然だろ」

だから言ったじゃないか。

あいつらは俺たちのことを、本当の仲間だと認めることはないって。

「一言くらい、連絡があってもよくない?」

「うるせー」

山崎が泣いている。

これでコイツにも、ようやく分かっただろ。

あいつらは決して、味方でもなければ、仲間でもないって。