「慎重すぎるとは思うけど、手堅いと言えば手堅いよね」

俺は一人、そうつぶやく。

いま競技をしているチームは、4秒間隔を8秒に延長させていた。

つまり、全得点30点のうち、半分を捨てる代わりに、確実に15点を獲りにいく作戦だ。

1本目の的を撃ち抜いた後は、2本目の出現的を無視して、3本目を狙いにいく。

仕組みは鹿島たちと同じ、中央のゼロ位置からセンサーで的を狙っていた。

4秒が8秒に延長されたことで、マシンのリスタートに余裕があった。

試合終了の合図があり、会場が拍手に包まれた。

第6会場、1組目の得点は13点。

複数の的が同時に出た時に、マシンの標準合わせが遅れた。

センサーの優先順位の問題だろうな。

最初から球数を減らしている分、外すと痛手も大きい。

判定終了の合図があって、撤収作業をしながらも、彼らは次の試合の、上位8組だけが出られる最終トーナメント戦にむけて、プログラムの改正案を出し合っていた。

目の前に、何もないフィールドが広がる。

次は、鹿島の番だ。

主催者側の的が、新しいものと交換された。

鹿島たち出場者3人が、審判員から人員確認とマシン審査を受けている。

規定の段ボールごと重量測定を済ませ、スターティングゾーンに、3人が入った。

鹿島たちの周囲に、部員の輪が出来る。

みんな思い思いに、彼らの背中に向かって声援を飛ばしていた。

チームリーダーの緊張した鹿島の横顔は、相変わらず画になる。

あぁ、奥川も来たんだ。

俺はそれを、離れた位置から見ている。

審判のスタートの合図がなった。

鹿島たちは戦場に飛び出す。

セットされた的に触れることは許されていない。

レーザーの測定器で精密に距離を測り、慎重にスタート位置を探る。

自動ロボの命だ。

セッティングタイムの時間表示が、残り30秒を切った。

鹿島の指先から、マシンが離れる。

ここからは、彼らの制作した自動ロボの性能、ただ一つにかかっている。

俺たちにはその様子を、見守ることしか出来ない。

3人はスターティングゾーンに戻った。

制限時間終了の合図がなり、審判員がマシンを確認する。

OKサインがあがり、主席審判員がうなずいた。

「用意、スタート!」