リアルに動かしてみることは、とてつもない経験になった。

それがいいとか悪いとかじゃなくて、とにかく俺の中で、経験値としての何かを、確実に積んだ。

俺のマシンの問題点はなんだ? プログラム上は何の問題もない。

ちゃんと動かせばちゃんと動くのに、どうしてそれが上手くいかなくなる時があるのだろう。

頭の中でやってみた計算では、完璧なはずなのに。

明らかに日が短くなった。

夏が終わると、本当に日が落ちるのが早くなる。

理科室にこもっている時間の感覚が、少しずつ狂ってくる。

太陽の熱も下がる。

俺の体温は、何も変わっていないのに。

しまった。

せっかくならデモの様子を、動画撮影しておけばよかった。

一瞬奥川の顔が浮かんだけど、撮っていた様子もなかったし、今は顔も合わせにくい。

俺は動かない的の前にマシンを設置して、何の失敗もなく動くマシンを相手に、途方に暮れていた。

途方に暮れるとは、まさにこのことだ。

なぜあの時は上手くいかなくて、今が普通に動くのか、それが分からない。

スイッチを入れる。

マシンは素直に俺の操作に従い、次々と正確に的を撃ち抜いた。

何がいけない、何が悪い。

どうしてコイツは肝心な時に、ちゃんと出来ないんだろう。

背後で理科室の扉が開く。

なんとなく後ろを振り返る気にもなれなくて、俺はどうにもならないマシンを前に、ため息をついている。

パソコンのプログラムは、何度も確認した。

ヘタに触ると面倒くさくなることの方が多いってのは分かっているから、何も出来ない。

そう、結局、今の状況を考えると、何もしないことの方が、最善手なのだ。

「手伝いに来てやったぞ」

その言葉に、俺は顔を上げた。

「あいつらはもう大丈夫だから、今度はお前を手伝う番、だろ?」

山崎の声だ。

俺は苦笑いをしながら、片手を上げる。

その手に山崎の手が力強く触れ、ハイタッチの音が乾いた空気に高く反響する。

「で、どうすりゃいいの?」

パソコンの前に座った山崎に、一通りプログラムの説明をしてみた。

「うん、分かんねー」

まぁね、そうだよね。

そういう返事しか返ってこないだろうなって、分かっちゃいたけど、今はここに居てくれるだけで、うれしい。