次の日も、僕は公園に来ていた。
午前中に来たからか子どもたちはいなくて、来ているのはおじいさんおばあさんくらいだった。
昨日とは違ってどんよりと曇っていて、天気予報ではおそらく雨は降らず、明日は降ると言っていたけど、僕は一応折り畳み傘をバックに忍ばせていた。カメラが濡れてしまわないよう、念には念の準備をしておかなければならない。
より懐かしい雰囲気を引き出してみたくて、メニューからピクチャースタイルに入り、モノクロに設定してから、白黒の風景写真を撮っていく。
すると、にゃー、というかわいらしい鳴き声が足元から聞こえてきた。下を向くと真っ白な猫がいて、しゃがむとその猫は僕の足にすり寄ってきた。
撫でてあげると、いっそうとろんと目元が細くなる。
うわ、めっちゃかわいい。
つい笑顔になっていて、細くて柔らかい毛が気持ち良くて、ずっと触っていたくなる。
顎のあたりを掻いてあげると、猫はこっちを見上げた。
僕はおもわず手を止め、カメラを猫に向けていた。
被写界深度を下げて、周りをぼかす。懐いてくれたのか、真っ直ぐにこっちを見てくれて、焦ることなく何回も撮ることができた。撮った写真を見てみると、「すごい」と声が漏れていた。
クローズアップ(顔のアップ)で撮ったのは、眩しくて細くなった猫の瞳だった。
光に当たると、ほんのり紫がかっていた。
珍しい瞳だった。
だからかつい見とれていると、いつの間にか猫はどこかへ行ってしまった。もっと触っていたかったけど、猫は気まぐれというくらいだから、しょうがないようにも思えてきた。
ひとまず重い腰を上げ、大学へ向かうことにした。
泉場公園を出て交差点を渡り、文慶大学の中へ入っていく。一年生のころは少し迷うこともあったけど、今はもう行きたい場所にたどり着くことができるようになった。
教室に入って講義の準備をしていると、だれかに肩を叩かれる。だれだろう、と振り返ったやさきに何かが頬に刺さる。僕はため息交じりにそれを退ける。
こんなことを僕にするやつなんて、学内でたった一人しか知らない。
「螢って、ほんとに素直だよな」
「うるさいよ、蓮」
僕は息を吐くように言うけど、友達である大沢蓮はそんなの全く気にせず、むしろ面白がって無邪気に笑っていた。僕はまたため息を吐いてしまい、諦め半分に手を動かす。
「そういえば、螢ってこの前出た課題終わらせた?」
「うん、終わったよ」
「まじかー、俺、分かんないとこあったんだよな」
見せてくんない? 多くの人がそういうふうにねだってくるだろう、でも。
「じゃあさ、今度教えてもらっても良い?」
僕は自然と、口の端が上げて頷いていた。たまにイラっとはするけど、蓮は軽そうな見かけに反して、真面目なところは真面目だった。
だからこそ、友達でいたいと思うのかな。
大学に入って初めてできた友達が、蓮だった。
出会ったときから、こんなふうに子どもっぽいやつ。言ったところで変わらないから、もうなにも言わないことにしていた。
けれど蓮のことが嫌いなわけじゃなく、むしろ学内では一番仲が良い友だちと言えるんだろう。
とはいえ、蓮自身がどう思っているかは、知らないけど。
午前中に来たからか子どもたちはいなくて、来ているのはおじいさんおばあさんくらいだった。
昨日とは違ってどんよりと曇っていて、天気予報ではおそらく雨は降らず、明日は降ると言っていたけど、僕は一応折り畳み傘をバックに忍ばせていた。カメラが濡れてしまわないよう、念には念の準備をしておかなければならない。
より懐かしい雰囲気を引き出してみたくて、メニューからピクチャースタイルに入り、モノクロに設定してから、白黒の風景写真を撮っていく。
すると、にゃー、というかわいらしい鳴き声が足元から聞こえてきた。下を向くと真っ白な猫がいて、しゃがむとその猫は僕の足にすり寄ってきた。
撫でてあげると、いっそうとろんと目元が細くなる。
うわ、めっちゃかわいい。
つい笑顔になっていて、細くて柔らかい毛が気持ち良くて、ずっと触っていたくなる。
顎のあたりを掻いてあげると、猫はこっちを見上げた。
僕はおもわず手を止め、カメラを猫に向けていた。
被写界深度を下げて、周りをぼかす。懐いてくれたのか、真っ直ぐにこっちを見てくれて、焦ることなく何回も撮ることができた。撮った写真を見てみると、「すごい」と声が漏れていた。
クローズアップ(顔のアップ)で撮ったのは、眩しくて細くなった猫の瞳だった。
光に当たると、ほんのり紫がかっていた。
珍しい瞳だった。
だからかつい見とれていると、いつの間にか猫はどこかへ行ってしまった。もっと触っていたかったけど、猫は気まぐれというくらいだから、しょうがないようにも思えてきた。
ひとまず重い腰を上げ、大学へ向かうことにした。
泉場公園を出て交差点を渡り、文慶大学の中へ入っていく。一年生のころは少し迷うこともあったけど、今はもう行きたい場所にたどり着くことができるようになった。
教室に入って講義の準備をしていると、だれかに肩を叩かれる。だれだろう、と振り返ったやさきに何かが頬に刺さる。僕はため息交じりにそれを退ける。
こんなことを僕にするやつなんて、学内でたった一人しか知らない。
「螢って、ほんとに素直だよな」
「うるさいよ、蓮」
僕は息を吐くように言うけど、友達である大沢蓮はそんなの全く気にせず、むしろ面白がって無邪気に笑っていた。僕はまたため息を吐いてしまい、諦め半分に手を動かす。
「そういえば、螢ってこの前出た課題終わらせた?」
「うん、終わったよ」
「まじかー、俺、分かんないとこあったんだよな」
見せてくんない? 多くの人がそういうふうにねだってくるだろう、でも。
「じゃあさ、今度教えてもらっても良い?」
僕は自然と、口の端が上げて頷いていた。たまにイラっとはするけど、蓮は軽そうな見かけに反して、真面目なところは真面目だった。
だからこそ、友達でいたいと思うのかな。
大学に入って初めてできた友達が、蓮だった。
出会ったときから、こんなふうに子どもっぽいやつ。言ったところで変わらないから、もうなにも言わないことにしていた。
けれど蓮のことが嫌いなわけじゃなく、むしろ学内では一番仲が良い友だちと言えるんだろう。
とはいえ、蓮自身がどう思っているかは、知らないけど。