* * *
「先輩、お疲れ様です。約束通り、遊びに来ました」
「悠里君のバカ! 嘘つき! 変態! いじめっこ!」
軽く手を上げて教室に入ってきた僕を、奈津美先輩は廊下まで響くような大声で歓迎してくれた。
真っ赤な顔で涙目になった奈津美先輩は、手に持っていた丸いお盆で胸元を隠している。
いや、隠さなくても僕は別にあなたの胸に興味ありませんから。それくらいの扁平なものなら、毎日自分のを見ていますし。
ともあれ、メイド姿の奈津美先輩は、とてもかわいらしかった。黒に近い紺色のロングスカートに白のエプロン。いつも下ろしている髪を結い上げてまとめていて、綺麗な黒髪に白のヘッドドレスが映えている。これは見に来た甲斐があった。
大声を上げて周囲の視線を集めてしまった奈津美先輩は、更に顔を赤くして俯いている。
この人は、大抵この手の失敗をするな。まあ、そういうところも奈津美先輩らしさということなのだろうけど。
僕が思わず笑ってしまうと、奈津美先輩は涙目のまま僕のことを睨みつけてきた。
「先輩、いつまでもここにいると、余計に目立ちますよ」
「~~~~っ!」
一応指摘してあげたら、奈津美先輩はさらに文句を言いたげな様子で口をもにょもにょと動かした。けれど羞恥心が勝ったのだろう。「……こちらにどうぞ」と地の底から響くような声を出しながら、僕を席に案内してくれた。
僕が席に着くと、奈津美先輩は一端どこか消え、すぐにメニューと水を持って戻ってきた。まるで叩きつけるような勢いで、メニューと水を僕の前に置く。明らかに怒りが籠っていた。
「先輩、客商売でその態度はまずいと思いますよ」
「ご注文は何にいたしますか、ご、ご、ご……ご主……人様?」
僕の言葉は完全スルーして、引きつった笑顔を浮かべた奈津美先輩が、小さく首を傾げる。何度もどもっているところに、後輩である僕を「ご主人様」と呼ぶことへの葛藤を感じた。割とおもしろい。
ただ、このまま奈津美先輩をいじめ続けるのはさすがに可哀想なので、さっさとメニューを見て、定番メニューのオムライスを注文した。
「先輩、お疲れ様です。約束通り、遊びに来ました」
「悠里君のバカ! 嘘つき! 変態! いじめっこ!」
軽く手を上げて教室に入ってきた僕を、奈津美先輩は廊下まで響くような大声で歓迎してくれた。
真っ赤な顔で涙目になった奈津美先輩は、手に持っていた丸いお盆で胸元を隠している。
いや、隠さなくても僕は別にあなたの胸に興味ありませんから。それくらいの扁平なものなら、毎日自分のを見ていますし。
ともあれ、メイド姿の奈津美先輩は、とてもかわいらしかった。黒に近い紺色のロングスカートに白のエプロン。いつも下ろしている髪を結い上げてまとめていて、綺麗な黒髪に白のヘッドドレスが映えている。これは見に来た甲斐があった。
大声を上げて周囲の視線を集めてしまった奈津美先輩は、更に顔を赤くして俯いている。
この人は、大抵この手の失敗をするな。まあ、そういうところも奈津美先輩らしさということなのだろうけど。
僕が思わず笑ってしまうと、奈津美先輩は涙目のまま僕のことを睨みつけてきた。
「先輩、いつまでもここにいると、余計に目立ちますよ」
「~~~~っ!」
一応指摘してあげたら、奈津美先輩はさらに文句を言いたげな様子で口をもにょもにょと動かした。けれど羞恥心が勝ったのだろう。「……こちらにどうぞ」と地の底から響くような声を出しながら、僕を席に案内してくれた。
僕が席に着くと、奈津美先輩は一端どこか消え、すぐにメニューと水を持って戻ってきた。まるで叩きつけるような勢いで、メニューと水を僕の前に置く。明らかに怒りが籠っていた。
「先輩、客商売でその態度はまずいと思いますよ」
「ご注文は何にいたしますか、ご、ご、ご……ご主……人様?」
僕の言葉は完全スルーして、引きつった笑顔を浮かべた奈津美先輩が、小さく首を傾げる。何度もどもっているところに、後輩である僕を「ご主人様」と呼ぶことへの葛藤を感じた。割とおもしろい。
ただ、このまま奈津美先輩をいじめ続けるのはさすがに可哀想なので、さっさとメニューを見て、定番メニューのオムライスを注文した。