「探したわよ、悠里君。聞いて! 私、ついにやったの!」
パタパタと僕の前にやってきた彼女は、ウフフ、とうれしそうに笑う。
一方の僕は、仏頂面の半眼で答えた。
「ほう、そうですか。で、今回は何をやらかしたんですか、先輩? 職員室への呼び出しだったら、ひとりで行ってきてくださいね。補習だったら、逃げずに大人しく受けてきてください」
「もう、違うわよ! 人を問題児みたいに言わないで。〝やらかした〟んじゃなくて〝やった〟の!」
僕の皮肉に、奇怪な女生徒こと奈津美先輩は、上気した頬をぷくっと膨らませて憤慨した。笑ったり怒ったり、ころころと表情を変えて忙しない人だ。
あとひとつ言わせてもらえば、「問題児みたいに言わないで」も何も、現在進行形でやっていることがすでに問題だ。立派にやらかしている。
まあ、そんなことをいちいち突っこんでいては先に進まない。奈津美先輩と会話する上で大事なこと、それはスルースキルだ。過去を振り返ることなく、これからを大切にするため、僕は一切の感情を捨てた棒読みで言葉を紡いだ。
「わかりました。僕が間違っていました。先輩は問題児ではありませんし、やらかしてもいません。先輩は、僕が尊敬する立派な書籍部の部長です」
「うんうん。わかればいいのよ!」
奈津美先輩が、えへん! と胸を張る。
その仕草によって強調された部位が目に入った瞬間、僕の頭の中に〝関東平野〟の四文字が躍った。かわいそうに……。
「どうしたの、悠里君。お葬式みたいな顔をして」
「いえ、気にしないでください。ところで先輩、一度ゆっくり深呼吸をした後、周りを見回してみてくれますか?」
「へ? うん、わかったわ」
パタパタと僕の前にやってきた彼女は、ウフフ、とうれしそうに笑う。
一方の僕は、仏頂面の半眼で答えた。
「ほう、そうですか。で、今回は何をやらかしたんですか、先輩? 職員室への呼び出しだったら、ひとりで行ってきてくださいね。補習だったら、逃げずに大人しく受けてきてください」
「もう、違うわよ! 人を問題児みたいに言わないで。〝やらかした〟んじゃなくて〝やった〟の!」
僕の皮肉に、奇怪な女生徒こと奈津美先輩は、上気した頬をぷくっと膨らませて憤慨した。笑ったり怒ったり、ころころと表情を変えて忙しない人だ。
あとひとつ言わせてもらえば、「問題児みたいに言わないで」も何も、現在進行形でやっていることがすでに問題だ。立派にやらかしている。
まあ、そんなことをいちいち突っこんでいては先に進まない。奈津美先輩と会話する上で大事なこと、それはスルースキルだ。過去を振り返ることなく、これからを大切にするため、僕は一切の感情を捨てた棒読みで言葉を紡いだ。
「わかりました。僕が間違っていました。先輩は問題児ではありませんし、やらかしてもいません。先輩は、僕が尊敬する立派な書籍部の部長です」
「うんうん。わかればいいのよ!」
奈津美先輩が、えへん! と胸を張る。
その仕草によって強調された部位が目に入った瞬間、僕の頭の中に〝関東平野〟の四文字が躍った。かわいそうに……。
「どうしたの、悠里君。お葬式みたいな顔をして」
「いえ、気にしないでください。ところで先輩、一度ゆっくり深呼吸をした後、周りを見回してみてくれますか?」
「へ? うん、わかったわ」