「OK。悠里君が奈津美ちゃんのことをどう思っているかはわかったよ。ありがとう」
「どういたしまして。――あ、それとひとつ言い忘れましたけど、一応僕、これでも奈津美先輩のことは尊敬していますよ。今も昔も、ずっと」
「え……?」
目をパチクリさせる真菜さんへ、僕は「先輩には内緒ですよ」と前置きをして続けた。
「奈津美先輩は、それは滅茶苦茶な人です。――けど、本当にそれだけだったら、とっくに愛想尽かして書籍部を辞めています。僕が書籍部にいるのは、奈津美先輩が昔と変わらず製本家になる夢をひた向きに追いかけているからです」
言葉を紡ぎながら、奈津美先輩と出会った夏のことを思い出す。僕と奈津美先輩が出会ったのは八年前、夏休みに市立図書館で行われた小学生製本講座の時だ。
あの日、僕の隣に座っていたのが奈津美先輩こと奈津美ちゃんだった。
僕の叔父さんは講座を企画した司書、奈津美ちゃんのお祖父さんは講座の講師。関係者の身内ということで特別参加した僕らは、同じ机に集められたのだ。
当時の奈津美ちゃんは、今と違ってそれは大人しくて静かな子だった。
だから最初は会話もなかったけど――本を作る奈津美ちゃんの横顔を見て、僕は思ったんだ。
ああ、この子は何でこんな幸せそうに本を作っているのだろう。何で本を作るこの子は、こんなにもキラキラしているのだろう、って……。
『ねぇ。君、本を作るのが好きなの?』
気が付けば、僕は自然と奈津美ちゃんに話しかけていた。奈津美ちゃんは目をパチクリさせていたけど、すぐに『うん、大好き!』と笑って答えてくれた。
それからは本を作りながら色んな話をして、講座が終わる頃にはすっかり仲良くなってしまっていた。本が完成した時には、長年の親友みたいに息ピッタリでハイタッチしたものだ。
妙に気が合った僕と奈津美ちゃんは、次の日から図書館で遊ぶようになった。
僕らは一緒に本を読んだり、夏休みの宿題をしたり、お互いのことを話したりした。奈津美ちゃんはよくお祖父さんが作る本の話をしてくれて、僕は楽しく聞き入ったものだ。
そんなある日、僕らは将来の夢について語り合った。
「どういたしまして。――あ、それとひとつ言い忘れましたけど、一応僕、これでも奈津美先輩のことは尊敬していますよ。今も昔も、ずっと」
「え……?」
目をパチクリさせる真菜さんへ、僕は「先輩には内緒ですよ」と前置きをして続けた。
「奈津美先輩は、それは滅茶苦茶な人です。――けど、本当にそれだけだったら、とっくに愛想尽かして書籍部を辞めています。僕が書籍部にいるのは、奈津美先輩が昔と変わらず製本家になる夢をひた向きに追いかけているからです」
言葉を紡ぎながら、奈津美先輩と出会った夏のことを思い出す。僕と奈津美先輩が出会ったのは八年前、夏休みに市立図書館で行われた小学生製本講座の時だ。
あの日、僕の隣に座っていたのが奈津美先輩こと奈津美ちゃんだった。
僕の叔父さんは講座を企画した司書、奈津美ちゃんのお祖父さんは講座の講師。関係者の身内ということで特別参加した僕らは、同じ机に集められたのだ。
当時の奈津美ちゃんは、今と違ってそれは大人しくて静かな子だった。
だから最初は会話もなかったけど――本を作る奈津美ちゃんの横顔を見て、僕は思ったんだ。
ああ、この子は何でこんな幸せそうに本を作っているのだろう。何で本を作るこの子は、こんなにもキラキラしているのだろう、って……。
『ねぇ。君、本を作るのが好きなの?』
気が付けば、僕は自然と奈津美ちゃんに話しかけていた。奈津美ちゃんは目をパチクリさせていたけど、すぐに『うん、大好き!』と笑って答えてくれた。
それからは本を作りながら色んな話をして、講座が終わる頃にはすっかり仲良くなってしまっていた。本が完成した時には、長年の親友みたいに息ピッタリでハイタッチしたものだ。
妙に気が合った僕と奈津美ちゃんは、次の日から図書館で遊ぶようになった。
僕らは一緒に本を読んだり、夏休みの宿題をしたり、お互いのことを話したりした。奈津美ちゃんはよくお祖父さんが作る本の話をしてくれて、僕は楽しく聞き入ったものだ。
そんなある日、僕らは将来の夢について語り合った。