「そうですね、強いて言うなら……僕がこれまで出会った中で、一番傍迷惑な先輩です」

 キランと目元に星が輝きそうな表情で返事をしてみる。我ながら、実に簡潔かつ的を射た回答だ。

「……へ?」

 どうだ、と言わんばかりに真菜さんを見たら、笑顔のまま固まっていた。

 そっか。この人は学校での奈津美先輩を知らないんだった。奈津美先輩は割と面子を気にする人だから、真菜さんの前ではいつでも良い子にしていた可能性もある。ここまで簡潔にしては、伝わらないのかもしれない。
 仕方ないな。それなら、少し解説を加えておこう。

「真菜さんは知らないかもしれませんが、奈津美先輩って学校ではいつもすごいんですよ。向こう見ずで思いついたら即行動を起こすし、猪突猛進だから周りは見えてないし、そのくせ忘れっぽいから反省しないし……。おかげで僕は、割を食ってばかりです。不名誉なことに、生徒会からは奈津美先輩の手下Aとして、準危険人物に指定されていますし」

「えっと……悠里君って、優しい顔して結構ズバズバものを言うね。ちょっと意外……」

「いやー、僕だって奈津美先輩以外なら、ここまでボロクソに言いませんよ。そういう意味でなら、あの人は特別です。そうそう。この間なんて、付きっ切りで期末の勉強を教える羽目になったんですよ。二年生の僕が、三年生の奈津美先輩に。本当に勘弁してほしいです」

「あ、あはは。それは何と言うか……ご苦労様?」

 やれやれと首を振っていたら、真菜さんから苦笑交じりに労われた。と思ったら、真菜さんが盛大にため息をついた。

「……奈津美ちゃん、想像以上に空回りしてるなぁ。気持ちはわからんでもないけど、これじゃあ逆効果だよ」

「ええ、先輩の空回り具合は、いつも想像を超えてきます。唐突によくわからんことを始めますから、僕も振り回されっぱなしです」

「ああ、うん。そういう意味じゃないんだけどね」

 真菜さんが、「どうしたもんだろう……」と呟きながら、頭を押さえた。
 奈津美先輩をどうにかできる策があるなら、ぜひとも教えてもらいたいものだ。けど、この様子だと望み薄かな。残念。