ただ、三十分もこのノリで同じ話に付き合わされていると……さすがにウザったい。奈津美先輩はテンションがうなぎ上りだから、なおさらだ。うれしいのはわかったから、そろそろ落ち着いてほしい。
 と、そこで僕は、ふと思い出したことを口にした。

「でも先輩、朝の英単テストでは結局補習になったんですよね。そっちの禊は済んだんですか?」

 先週、先々週は期末テスト期間ということで、英単テストはお休みだった。しかし、期末テストも終わったので、今週からは再開している。

 そして、期末テストが終わってすっかり気の抜けた奈津美先輩の得点は、驚愕の三点だったらしい。期末の赤点対策で英語も猛勉強していたはずなのに、どうしてこうなったのか……。僕にも謎である。

 ただひとつはっきりしているのは、期末テストをはさんで、先輩の平均点半分以下が五週連続に到達したということ。つまりは、補習確定だ。赤点は回避できても、補習の魔の手だけは回避できなかったようだ。

 で、僕の質問を向けた奈津美先輩はというと、一瞬にしてテンションが夏から冬へと急転直下した。
 太陽のように明るい笑みは哀愁を帯びた悲しい微笑に変わり、奈津美先輩の周りだけ木枯らしが吹き始めたかのように色が褪せていく。

 まさかここまで効果があるとは……。ちょっと落ち着いてくれればいいな~、くらいの気持ちで言ったのだけど、これは予想外だ。完全に地雷を踏み抜いてしまった。やり過ぎちゃった感が半端なくて、少し心が痛い。