* * *
約束通り、資料室で本を読みながら待っていると、奈津美先輩は三十分ほどして戻ってきた。
「悠里く~ん、お待たせ~……」
「ちょっと先輩、どうしたんですか!」
書架の間から顔を出した奈津美先輩の姿に、僕は思わず声を上げてしまった。それほど奈津美先輩はひどい姿だったのだ。
制服のタイは寄れて曲がり、髪は乱れまくっている。しかも、体のあちこちには葉っぱがくっついていた。
この人、どこで何をしてきたんだ……?
「気にしないで。ちょっと手とか足とか滑らせただけだから。それよりも、準備は整ったわ。勝負を始めるわよ」
身だしなみを整えた後、奈津美先輩がふたつ折りにされたメモを差し出してきた。
反射的にメモを受け取って開こうとすると、奈津美先輩が「まだ見ちゃダメよ」と制止してきた。
「あと三分待って。あと三分で十時になるわ。ちょうどいいから、十時ジャストからスタートにしましょう」
「わかりました。じゃあ、それで」
メモを手に持ったまま、資料室の掛け時計に目をやる。秒針は焦らすようにきっちりと時を刻んでいき、一周、二周と文字盤を回る。
そして、ついに時計の秒針と長針が、頂点で重なった。
「はい! 宝探し、スタート!」
十時になると同時に、奈津美先輩が大きく手を打った。
同時に、僕も手に持っていたメモを開く。そこには、奈津美先輩の丸っこい字で最初のヒントが書かれていた。
書かれていたのは、たったの一文だ。
【一ノ瀬悠里君、あなたの夢は何?】
これを見た瞬間、僕は資料室から飛び出した。
このフレーズには、聞き覚えがある。奈津美先輩とこの学校で再開した時、最初に言われた言葉だ。ならば、とりあえず目指すべき場所は校門だろう。安直過ぎる気もするが、そこは奈津美先輩がすることだし、ド直球くらいでちょうどいいはずだ。
資料室を出た僕は、特別教室棟を出て、本校舎に入る。各学年のクラスが並ぶ本校舎は、すでに多くの人で賑わっていた。今日は土曜日で一般開放もされているから、うちの制服以外にも他校の制服姿や私服姿が目に付く。
そんな人の波を遡るようにして、昇降口を目指す。
靴を履き替えて外に出ると、校門までの道もたくさんの人で溢れていた。校門から入ってくる一般来場者に、各クラスの呼び込み担当がチラシなんかを手渡している。
約束通り、資料室で本を読みながら待っていると、奈津美先輩は三十分ほどして戻ってきた。
「悠里く~ん、お待たせ~……」
「ちょっと先輩、どうしたんですか!」
書架の間から顔を出した奈津美先輩の姿に、僕は思わず声を上げてしまった。それほど奈津美先輩はひどい姿だったのだ。
制服のタイは寄れて曲がり、髪は乱れまくっている。しかも、体のあちこちには葉っぱがくっついていた。
この人、どこで何をしてきたんだ……?
「気にしないで。ちょっと手とか足とか滑らせただけだから。それよりも、準備は整ったわ。勝負を始めるわよ」
身だしなみを整えた後、奈津美先輩がふたつ折りにされたメモを差し出してきた。
反射的にメモを受け取って開こうとすると、奈津美先輩が「まだ見ちゃダメよ」と制止してきた。
「あと三分待って。あと三分で十時になるわ。ちょうどいいから、十時ジャストからスタートにしましょう」
「わかりました。じゃあ、それで」
メモを手に持ったまま、資料室の掛け時計に目をやる。秒針は焦らすようにきっちりと時を刻んでいき、一周、二周と文字盤を回る。
そして、ついに時計の秒針と長針が、頂点で重なった。
「はい! 宝探し、スタート!」
十時になると同時に、奈津美先輩が大きく手を打った。
同時に、僕も手に持っていたメモを開く。そこには、奈津美先輩の丸っこい字で最初のヒントが書かれていた。
書かれていたのは、たったの一文だ。
【一ノ瀬悠里君、あなたの夢は何?】
これを見た瞬間、僕は資料室から飛び出した。
このフレーズには、聞き覚えがある。奈津美先輩とこの学校で再開した時、最初に言われた言葉だ。ならば、とりあえず目指すべき場所は校門だろう。安直過ぎる気もするが、そこは奈津美先輩がすることだし、ド直球くらいでちょうどいいはずだ。
資料室を出た僕は、特別教室棟を出て、本校舎に入る。各学年のクラスが並ぶ本校舎は、すでに多くの人で賑わっていた。今日は土曜日で一般開放もされているから、うちの制服以外にも他校の制服姿や私服姿が目に付く。
そんな人の波を遡るようにして、昇降口を目指す。
靴を履き替えて外に出ると、校門までの道もたくさんの人で溢れていた。校門から入ってくる一般来場者に、各クラスの呼び込み担当がチラシなんかを手渡している。