「いつもありがとうございます! またのご来店をお待ちしております!」

 二十二時ちょうど、今日最後になる客のレジ打ちを終えて従業員控え室に戻ると、タイムカードの計算をしていた店長に手招きされた。

「お疲れ様です、店長」

「おう、お疲れ恭矢。お前にこれをやろう。半額になるのを待って、さっき買ってきた」

 店長が手渡してくれたのは、半額シールが貼ってある焼き鳥だった。

「今日は焼き鳥が大量に売れ残ったんですか?」

「違うわ馬鹿、ただのプレゼントだ」

「……プレゼント? 嬉しいっすけど、売れ残り半額の焼き鳥って……」

「文句は受けんぞ馬鹿野郎。……いやさ、お前一時期変だったけど、最近また頑張ってくれているからさ。この焼き鳥は日頃のお礼と、時給アップのお祝いだよ」

「時給アップですか!? やった! ありがとうございます! 俺、これからも頑張ります!」

 焼き鳥を受け取って頭を下げると、店長は嬉しそうな顔をした。夏休みは昨年と同様、大型ライブのスタッフやプールの監視員など夏休みにしかできないバイトを増やし、毎日必死に働いた。遊ぶ暇もなく過ごした夏はいつの間に終わっていて、暦はもう九月になっていた。

 夏が短いこの街では、九月に入るとぐっと涼しくなる。自転車でひんやりとした風を切りながら、恭矢は家路を急いだ。