私と真宙くんは屋上に来ていた。


 屋上から見える景色を見ながら。
 思っていた。

 黒川さんに追い詰められていたとき。
 真宙くんが助けに来てくれていなかったら。
 私はどうなっていたのだろう。
 そう考えると、恐ろしくなってくる。


 真宙くんにお礼を言わなくちゃ。


「あの……真宙くん……
 さっきは助けてくれて、ありがとう」


「いいよ、そんなこと。
 ……それより」


 ……?


「なんで俺に相談してくれなかったの。
 黒川さんから、あんな目にあっていること」


 真宙くんの言葉に。
 何も言うことができなかった。


「もっと俺を頼ってよ、希空ちゃん」


 ありがとう、真宙くん。

 真宙くんの優しさ。
 とても嬉しい。


 だけど。
 真宙くんに頼るということは。
 話さなければならないということになってしまう。
 知られたくない過去を真宙くんに。

 それは。
 私にとっては、かなり難しい問題。

 だから我慢するしかなかった。



「そうだ希空ちゃん、
 前にさ、希空ちゃんと一緒に出かけたいねって言ってたでしょ。
 それでさ、近いうちに空いてる日ない?
 俺、どうしても希空ちゃんに話したいことがある」


 話したいこと……?


「どうしても休みの日がいいんだ」


 真宙くんの真剣な眼差し。

 伝わってくる。
 真宙くんの真剣さ。


 そんな真宙くんのことを見ていると。
 緊張してしまう。

 だけど。
 聞きたい。
 真宙くんの話。


 ……それに……。
 ……会いたい。

 話を聞きたいだけではなく。
 会いたい。
 真宙くんに。

 そう思ったから……。



 こうして。
 私と真宙くんは今週の土曜日に会うことを約束した。