まだ無言の僕と加恋ちゃん。


 僕と加恋ちゃんの空間がいつもとは違う特別の時間が流れているように感じた。


 風でやさしく揺れている加恋ちゃんの髪。


 そしてその風に乗ってほんのり甘い香りがする。


 その香りがとても色っぽく感じた。


 その香りが僕の胸の鼓動を高ぶらせる。


 僕は、このとき自分の気持ちが抑えられそうになかった。


 僕の好きな加恋ちゃんが僕の目の前で僕の真下にいる。


 これは……。


 僕も一人の男だ。


 こんなシチュエーションで好きな女の子と何もしないで済むことなんて……僕にはできない……。


 加恋ちゃん……。


 僕は、そのまま加恋ちゃんに……キス……を……。


「ダメ‼」


 え……?


 加恋ちゃん……?


 加恋ちゃんはそう言った後、僕を軽く突き飛ばした。


 そして起き上がった加恋ちゃんは、そのまま下を向いてしまった。


「……ごめん……優くん……」


「……加恋ちゃん……?」


「……ダメ……優くん……」


「……なんで……」


「……わたしは……」


「……加恋ちゃん……?」