僕は、はっと気付いた。

 何をそんなにもジロジロと女の子のことを見てしまって……と。

 これでは、まるでセクハラになってしまう。

 そう思った僕は慌てて花咲さんから目をそらした。


 それと同時。


「草野」


 担任の先生が僕の名前を呼ぶ。


「はい」


 先生に名前を呼ばれて返事をする、僕。


「花咲は草野の隣の席に座ってもらうから、いろいろと教えてやってくれ」


「はい」


 花咲さんが僕の隣の席……。


 僕は、それを聞いて少しずつ胸の鼓動が高鳴るのを感じた。


「花咲、あそこの席に」


「はい」


 花咲さんは透明感のあるきれいな声で返事をした。


 返事をした後、花咲さんは僕の隣の席に向かって歩き出した。


 花咲さんが僕の隣の席に向かって歩いてくる。


 歩いてくるときに生まれる風が花咲さんの髪をやさしく揺らしていた。

 髪をやさしく揺らしながら歩いてくる花咲さんの姿は絵になるほど美しくキラキラと輝いていた。

 花咲さんが通った後の空間は、目には見えないけど、そこに花が咲いたようなそんな雰囲気を感じる。