「そっかぁ、惜しいな……」


 惜しい……?


 天井を見上げたままフッと漏らすように言った愛美ちゃんの言葉。


 僕はその言葉の意味がわからなかった。


 天井を見上げていた愛美ちゃんは、ゆっくりと顔を下げて正面に戻した。


 正面には戻したけど、顔も目線も僕の方には向けていなかった。


「……わたしも、もし夏休み前に転校していたら……少しは……違って……たのかな……?」


 ……え……?


 顔も目線も僕の方に向いていなかった愛美ちゃんの顔と目線が僕の方に向けられた。


 僕の方をじっと見つめる愛美ちゃん。


 僕もそんな愛美ちゃんの方を見ていた。


 その時間はほんの少しのはず。


 だけど実際の時間よりも長く感じた。


 この間はどうしたらいいのだろう。


 僕がそう思ったとき……。


「……好き……」


 ……え……?