……加恋ちゃん……。


 僕は加恋ちゃんが外に出ているか周りを見渡した。


 加恋ちゃんはまだ来ていない。


 僕は加恋ちゃんを待った。


 加恋ちゃんを待って少し経ったそのとき……。


「優くん」


 加恋ちゃんが小声で僕のことを呼んだ。


「加恋ちゃん」


 僕も加恋ちゃんのことを小声で呼んだ。


「加恋ちゃん大丈夫だった?」


「うん。みんなが寝ているところをこっそりと抜け出して、先生たちの見回りもなんとか切り抜けることができたよ」


「よかった」


「でもドキドキしちゃった。部屋を抜け出すとき、扉を開けなければいけないでしょ。そのときに音を立てないようにゆっくりと開けようとすると手が震えちゃうの」


「それ、すごくわかるよ。僕も扉を開けるとき、手が震えたよ」


「それから、先生たちの隙をくぐり抜けて来るときも、すごくドキドキしちゃった」


「僕も」


 僕と加恋ちゃんは、そう言って顔を見合わせて笑った。


「加恋ちゃん、行こう」


「うん」


 僕は加恋ちゃんの手をつないで歩き出した。