(あとは、酒で潰されなけれは、明日粛清されずに済む……)

警戒しつつ、誉の横に移動した。どうせ杯を受けるなら、仕事として頑張っている姿を上司に見てもらっておこうと思ったのだ。

「御堂さん、俺の講話どうでしたか?」

どうせごはんに夢中で聞いていないだろうと尋ねると、湯呑みを手にした誉が真顔で答える。

「原稿の時点で直しきってあるから問題ない。おまえがつっかかったり、照れ隠しに苦笑いするのは想定の範囲内だ」
「想定されてたんですね」
「いい大人が恥ずかしいと思え。毅然としろ、馬鹿が」

冷たすぎる言葉にしおしおと背を丸めていると、座敷の上座の方から諸岡の声が飛んできた。

「御堂、階、こっちへ」

呼ばれるままふたりで諸岡の近くに寄る。会長の加藤から話があるようだった。

「ちょっとご相談というか、雑談の範囲なんですけどね」

加藤が前置きをしてから口を開いた。

「先ほどの階さんの講話で思いだしたのですが、最近地元の子どもたちが頻繁に出入りしている場所があるんです」
「はあ」
「近くの商店の者から聞いたんですがね。あるマンションにやたらと中高生くらいの男子が出入りしていると。二、三人じゃないんですよ、結構な人数」