今日は、四月にしてはずいぶん暑い。月をふたつほど飛び越して、七月くらいに感じる気候だ。玉のような汗がツウ、と背骨に沿って皮膚を伝う。

 外の暑さと、体育館の暑さはまた種類が違う。館内は日差しを受けずに済むものの、閉めきられているために熱気がこもり、蒸し風呂状態だ。しかしその熱気が、かえって俺をやる気にさせる。


「次、3対2対1!!」


 腹から出した俺の声に、「はい!!」と部員たちが元気よく返事を重ねる。

 3対2対1とは、バスケの練習メニューのひとつだ。

 オフェンス三人に対し、ディフェンスが二人。ディフェンスのポジションや意図を観て、オフェンスは走るコース、パスの方向、ドリブルを使うかなどを考え、動く。こういった練習の積み重ねが、試合のときに活かされてくる。

 一応キャプテンを務めている身なので、仕切りは基本、俺に一任されている。とはいっても、練習メニューは顧問から指示されているものを行うだけだから、俺が特別考えるようなことはないのだけれど。

 3対2対1のほかには、フットワーク、パス練習、シュート練習、3on3、1on1、試合形式練習……と、それらに加えて、個人的なメニューがもうひとつ。

 練習終了後に、俺はいつもフリースロー対決を控えている。そしてこの対決の相手は、翔太ではない。