少し依頼内容に触れる程度ならば問題ないか。そう思って僕は簡単に依頼内容を話すことにした。

「実はテストで100点を取りたいという小学生の依頼なんですよ。それが取れなければ親御さんからペットを飼う許可が下りないとかで」
「あら、可愛らしい依頼なのね」
「そうなんですよ。可愛い依頼なんですが、中にはそれをはなから無理だと言う人がいてですね……」

 左右が見えることは公言しないようにしている。左右が見えるみーこさんとそれを知っていて信じている宮司であるみーこさんの父親だけの秘密だ。
 見えることを秘密にする必要も本来であればないのかもしれないが、僕自身霊感というものを持っているとは思わない。左右が見えること自体が例外で、なぜ見えるのかもわからない。だからそれを他の人に言って周りを混乱させたくもないし、僕自身、人の意見で混乱したくもない。きっと見えることを言えば周りの人に質問責めにされるだろうから。
 みーこさんも左右が見えるのはみーこさんにとって普通のことだが、他の人にとっては普通のことじゃないと理解している。だからこそみーこさんですらわざわざ自分から公言しないと以前に聞いたことがある。だから僕もみーこさんに習ってそうしているのだ。

「無理かどうかはやってみないと分からないですよ」
「それはそうね」

 ほらみたことか。キヨさんも僕の意見に賛成じゃないか。
 僕は味方を得た、と鼻が高くなっていた。けれど畑から戻ってきたばーちゃんはこう口を挟んだ。

「100点だったら、本人のやる気次第とあとは運やわなぁ。どれだけそのテストが難しいんかは知らんけどねぇ」

 小学一年生のテストだったら、きっと100点取るくらいさほど難しいわけじゃないと思うんだよね。

「そうだけど、無理ではないでしょ?」
「無理ではないよ。ただ親御さんは試したいんだろうねぇ。動物は飼った後が大変だからねぇ」

 それは間違いない。拾うのは簡単だし、同情するのも安易にできる。だけどその気持ちを継続してきちんと育てることができるかどうかは別の話だ。

「雅人くんのお父さんもそうだったんだよ。犬を拾ってきて、面倒は自分がみるって言ってたのに、結局面倒見るのはばーちゃんだったからねぇ」

 かっかっかとばーちゃんは笑い飛ばして席に座った。

「一度は通る道でしょうかね? そう言えばうちの子が幼い時もそうでしたわ」

 キヨさんも笑ってばーちゃんが出した緑茶を一口飲んだ。