「光里?大丈夫?」
耳元で、心配そうな美里の声だけがはっきりと聞こえた。
「うん……」
心配かけちゃいけないと思う反面、すでにこの場から逃げ出したくなっている。だけどそんなことをしたら、誘ってくれた2人に悪いし……
ああ、そうかーー今になって、ようやく気づいた。隣のクラスの男子が来ることは、最初から決まっていたんだ。
きっと、この中の誰かが、美咲のことが気になっているんだ。美咲は恋愛には興味がなさそうだけれど、しっかり者の美人キャラで、男子からひそかに人気があるのは知っている。でも最初にそれを言ったら断られるかもしれないから、あえて言わなかった。
私はおまけで誘われただけだろうけど、なんだか騙された気がした。
「どうした陽太?」
「いや、女子が来るって聞いてなかったから」
「え、だって言ってないし」
と守屋くんが悪びれなく答える。
「女子いるって言ったらおまえ来ないだろ?」
陽太も知らなかったんだ。そりゃそうか。彼女がいるんだから、こういうの嫌だよね。
「ま、いいけど」
いいんだ……。
陽太は怒っているわけではないらしく、そう言うと、守屋くんと普通に話しはじめた。一瞬、ピリッとした空気が、それで戻った。
「じゃ、最初守屋な」
「おー任せろ」
マイクを手に宣言した守屋くんが宣言する。
特徴的なダンスが人気の男性グループの歌だ。歌いながら乗ってきたのか、立ち上がって踊り始める守屋くん。
「なにその気持ち悪い動き!」
くねくねした変な動きに、みんながどっと笑う。
「こんな感じじゃなかった?」
「全然違うって」
守屋くんのおかげで部屋の緊張感は一気に解けて、みんな次々と歌を入れていく。
でも、私の緊張は、いっこうに解けそうにない。
人見知りなのもあるけれど、それ以上に、同じ部屋に、陽太がいるから。しかも、目の前に。
中学の卒業式の日、ケンカをしてから1年以上、一度も話をしていないのだ。
でも、その動揺を、悟られるわけにもいかない。
ここにいる人たちの中で、私と陽太が幼なじみだと知っているのは、たぶん、同じ中学だった守屋くんだけ。ほかの人は何も知らないはずだから。
耳元で、心配そうな美里の声だけがはっきりと聞こえた。
「うん……」
心配かけちゃいけないと思う反面、すでにこの場から逃げ出したくなっている。だけどそんなことをしたら、誘ってくれた2人に悪いし……
ああ、そうかーー今になって、ようやく気づいた。隣のクラスの男子が来ることは、最初から決まっていたんだ。
きっと、この中の誰かが、美咲のことが気になっているんだ。美咲は恋愛には興味がなさそうだけれど、しっかり者の美人キャラで、男子からひそかに人気があるのは知っている。でも最初にそれを言ったら断られるかもしれないから、あえて言わなかった。
私はおまけで誘われただけだろうけど、なんだか騙された気がした。
「どうした陽太?」
「いや、女子が来るって聞いてなかったから」
「え、だって言ってないし」
と守屋くんが悪びれなく答える。
「女子いるって言ったらおまえ来ないだろ?」
陽太も知らなかったんだ。そりゃそうか。彼女がいるんだから、こういうの嫌だよね。
「ま、いいけど」
いいんだ……。
陽太は怒っているわけではないらしく、そう言うと、守屋くんと普通に話しはじめた。一瞬、ピリッとした空気が、それで戻った。
「じゃ、最初守屋な」
「おー任せろ」
マイクを手に宣言した守屋くんが宣言する。
特徴的なダンスが人気の男性グループの歌だ。歌いながら乗ってきたのか、立ち上がって踊り始める守屋くん。
「なにその気持ち悪い動き!」
くねくねした変な動きに、みんながどっと笑う。
「こんな感じじゃなかった?」
「全然違うって」
守屋くんのおかげで部屋の緊張感は一気に解けて、みんな次々と歌を入れていく。
でも、私の緊張は、いっこうに解けそうにない。
人見知りなのもあるけれど、それ以上に、同じ部屋に、陽太がいるから。しかも、目の前に。
中学の卒業式の日、ケンカをしてから1年以上、一度も話をしていないのだ。
でも、その動揺を、悟られるわけにもいかない。
ここにいる人たちの中で、私と陽太が幼なじみだと知っているのは、たぶん、同じ中学だった守屋くんだけ。ほかの人は何も知らないはずだから。