心配はしたけれど、理由は終ぞ聞けないまま。
もう既に散々嫌われているのに、これよりもっと嫌われてしまうのが怖かった。
嫌われた、だからわたしも苦手になった。
そうして、ユリがあんな態度だから、だんだんわたしも腹が立って、嫌いになっていった。
そんな相手に、たとえ本心でも心配だなんだと声をかけたところで、ユリの機嫌を損ねるだけだ。
夏哉もユリが学校に行っていないことは知っていたけれど、家に行ったりユリと話をしている様子はなかった。
わたしの知らないところで、ユリに手を差し伸べていたのだろう。
この手紙を読めば、経緯も理由もわかるのかもしれない。
ふと、肝心の手紙が入った封筒に目を落として、さあっと背筋が粟立つ。
後先を考えずに開封してしまったこの手紙、かたく封をする分にはいいけれど、開いたあとは無残な姿だった。
ハサミやカッターで割くと戻せないから、とまでは頭が回っていたのに、他の手段が思いつかなかった。
綺麗に剥せると高を括っていたせいで、この有様だ。
封筒を入れ替えようにも、わたしは普段手紙を書かないから白地のレターセットすら持っていない。
リビングの棚のどこかに茶封筒ならあるけれど、まさかそれで代用するわけにもいかないし。
便箋を裸のままで渡すのも不格好だ。
封のない手紙なんて、中身を覗いたと疑われてもおかしくない。
「でも、どうせ開けたなら……」
妥協案よりも先に、悪いことが頭を占めた。
手紙をユリに渡したところで、目の前で読んでくれるとは思えない。
何かを聞き出そうとしても、訊ねる前に追い出されてしまうだろう。
今日で一区切りにしたい、次に進みたい。
そのためには、これも不可抗力だ。
バレなければ何をしてもいい、とまではいわないけれど、わたしは背徳感や罪悪感に押し負けてしまうほど、繊細な心は持っていない。
あまり得策とは呼べないけれど、ユリ宛の、それも夏哉からの手紙を勝手に読んだといえば、きっと怒ってわたしを放っておかない。
語彙の限りの罵詈雑言を投げかけられることを覚悟して、人宛ての手紙をはじめて、当人のいない場所で開いた。